紅屋楓

色彩豊かな絵画的小説
主人公・零の失恋から本作は始まります。苦しいながらも恋愛小説を思い出すあたり、かなり自分を客観視する子なのかな? と感じる一方で、元恋人の誕生日を知らせるスマートフォンの通知に胸を痛める……そのちぐはぐさが彼女が受けたダメージ大きさを語っていました。 そんな中、失恋の傷を癒やすために訪れた美術展で幼なじみの一希と再会。p.6の最終行で名前を呼ばれた瞬間の高揚感たるや!! 王道ですが、もう「そうこなくっちゃ、どうくるの?!」です🤩 さあここから! と言いたいものの、どうやら一筋縄ではいきそうにないのが本作。 とにかく幼なじみに謎が多い! 新進気鋭の天才画家のようだけど、核心部分には触れられません。 美術に造詣の深い零ちゃんをもってしても解けるどころか謎は深まっていくばかり……恋愛要素だけでないドキドキを味わえます。 散りばめられた伏線を読み飛ばしちゃいけないと、作品への没入感がすさまじいです。真相は、まだかとページをめくる手が止まりません。 また一希こと「イチ」のスマートさには思わず拍手をしたくなります👏💕✨ 一緒に美術館をまわるときの流れるようなエスコート、何より絵画好きで鑑賞に没頭する零を「眠り姫」と評するなんて〜😍!! キザな物言いもイチの爽やかさで甘ったるくなり過ぎず輝きが倍増しています。  作中には様々な個性豊かな登場人物がいますが、ひと度キャラクター出てくると、どんな人物かということが一発で伝わります。容姿や口調から判断できるだけでなく、キャラクターが持つ雰囲気まで文章から醸し出せる書き手はなかなかいないのではないでしょうか? 言語化するのは難しいのですが、私の中で一人一人の雰囲気も想像しつつ読んでいます。 また、おのおのの言動に一切のブレがなく、誰かが何かを考え・思う度に「そうなるよね〜!」と共感しています。読者に対する裏切りのないキャラクター像は安心して読み進めることができます。 (コメントへ続きます。)
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いち読者として感じたことになりますが、 (解釈違いでしたら申しわけございません💦) 本作の登場人物たちの多くが、現実にいながら精神世界を生きているような印象を受けました。台詞がとても詩的な表現をされていて、地の文だけでなく、会話からも絶妙に「イチの謎」が見え隠れします。まさしくパズルのピースのごとく。 この詩的な台詞力が効果絶大で、誰かが話す度に「この言い回しはどんな意味が含まれているんだろう?」と、零ちゃんと一緒に考えることができます。 考えながら読むのが好きなので、とても楽しい読書体験となりました。 少しずつ真相に近づいているような気がしているので、あらためて冒頭から読み返してみたいです。
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