小説を書きたい人、こんなお得な(笑)小説無いです!!
「文章が読めずに、字面をビジュアルとして読む」子供すら増えてきている現代日本に、警鐘を鳴らすこの小説は、2022年エブリスタで私が勝手ながらベストワンに選ばせて頂いたものです。 亜文盲が増加した近未来。軍によって訓練された著述兵によるコンテンツ全般が輸出品=国防力となった、マルチバースの日本です。 書店が全滅(したと思われる)し、コンビニで書物を買おうか迷い箸していた主人公・啓裕は、著述一曹である鬼教官・鳩間チューターにハンティングされ、入隊することに。 瀬戸内海に浮かぶ胡桃島に隔離された国防軍コンテンツ基地で、愛ある文筆指導を受けることになるのですが……。 昨今、橘玲著の『バ カと無知』ベストセラーから分かるように、最早笑えない設定! ディストピアSFとして面白いのは勿論、本編では実際に執筆指導を鳩間チューターに習うことができます。なんてお得♡  登場人物が書いた小説、作中作を読めるという豪華な仕掛けは1粒で、3〜4、いや、10倍は美味しいマトリョーシカ小説でもあります。 小説の意義をこれでもか、と突きつけられる構造に唸ってしまうこと間違いなし。 しかも、著者のみな子さんの企み(笑)か、鳩間チューターが指導する小説技法の数々は本編で使用されています――やられた! 読了後に技法項目を「意地でも見つけます、チューター!」と衝動に駆られ、再読することに……。 技法例としては、記述によって効果を得られる「時間の遅延」。小説が読み手がいて完成する点を生かした小説本文で用いられる「読者との共謀」。本文にメリハリを付けつつ、徐々に情報開示していく「捨てカット」など。 これらは、冒頭からふんだんに散りばめられています。 例えば、胡桃島での景色。隣国のスパイに対抗すべく国防を尽くした(マルチバースの)日本であることを、こまやかな軍事施設の描写で色濃く告げています。それも情報は徐々に伝えていくことで、主人公・啓裕のライバル、柴田の存在感が際立っていきます。 ちなみに、啓裕の小説力は「世界観構築力」が抜きん出ていますが、これには具体的な情報の量が問われます。 ディストピアものを書く時に薄っぺらな作品に陥りがちなのは、その世界での政治、軍事などが曖昧なせい……と自分の首を締める発言をしましたが💦 啓祐くんの情報量=みな子さんの情報量です。いやはや、お手本過ぎます! 続きますw↑
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 真哉ちゃん、もう言いたいことが胸にあふれてどうしていいかわかりません……! 2022年エブリスタでベストワン認定、ありがとうございます!!    本当にコンビニの「整理中」の札がついている空っぽな棚に岩波文庫が詰め込まれていたらすごかろう……というのが発想のきっかけでした。    橘玲さんの本は未読なのですが、ああいう辛口の本が受けているということは逆に、文盲グレーゾーンの人が多いな大丈夫かしら……と思っている層が一定数いるってことですよね?    「時間の遅延」、「読者との共謀」、「捨てカット」ここらはわかりやすく効果も大きいのでお勧めです!    とにかく、『SOL』は構想から一年弱かか

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