雫倉紗凡

確かな描写力あってこそ
休学中の大学生の薄暗い日常生活を描いた短編小説。大きな進歩も後退もないこの筋書きでここまで読者を心酔させるのは、確かな描写力あってこそ。真に「文章が巧い」人にしか書けない類の小説だと感じました。怠惰な生活をほのかに彩るコーヒーフロートの色彩、クリームソーダを引き金に表面化する自己嫌悪、母の些細な言い回しから伝わる娘への想い。どのページにも非常に奥行きのある描写が散りばめられており、最初から最後まで「感服」の一言でした。素晴らしい小説です。
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