けー

2度読み必至・胸を打つ和製ホラー(※この感想はネタバレ有り・読了後推奨です)
まず1周目を読むと、深く練られたストーリー構成が生み出す感動とホラーで、しばらく余韻に浸れます。気持ちよく騙してもらえ、読んでよかった、と感じます。 順を追って書きますと、まず、タイトルが覚えやすいのに不思議感があり、作品への興味をかき立てられます。次に、穏やかでない火災シーンで始まる冒頭で、強く引き込まれます。 また、この辺りを含めた序盤部分、時系列の開示をわざと曖昧にしてあることで、後半のどんでん返しへシームレスに繋げているのが秀逸だと感じました。 サンキャッチャーについて。これが何かよくないものだ、というのはp16時点の描写でおそらく読者は気づくと思われますし、実際真実なのですが、そこをまっすぐ繋げさせず、一度ミスリードへ導くギミック(“えりぼむ”が、モバイルの逆さ読みだという提示)が、情報開示のフェアさを保った高度なミステリとなっており、素晴らしいです。 最も感激したのは、南由の正体です。序盤で南由視点を作っておくことで、読者は南由という人物についての理解を自然と深められ、同時に、読者の視点=南由の視点の状態で、南由が否応なくホラーに巻き込まれていくため、南由への共感を勝ち取りやすい。 この算段が巧みで舌を巻くのですが、それが作者によって緻密に考えられたものだと気付くのは、南由が既に死者だったという真実が出て、その情報に強い悲しみを感じている自分に気づいてしまってからなんですよね。 もう南由のことがすごく好きになっちゃってることに、読者は、南由が助からなかったと知ってから気付かされる、という残酷なまでにクールな仕掛け。死んだことに気づいていない南由の哀れさ、切なさが畳みかけるように胸に押し寄せてくる。 この点が本当に、完成度の高い構成だと感じました。南由を放置して浮気する(ように見える)紘大にも、本気で怒ってしまいました。すっかり騙されました。 1周目に強く感じたのは驚嘆ですが、再読すると気づく、繊細な伏線も味わい深いです。 特に、P18で、出迎えた南由に驚いた顔をする紘大のシーンは、1周目は違和感を覚えつつもスルーしてしまったのですが、2周目に読んだら悲しすぎて震えました。 『えりぼむ』は珠玉のホラーですが、切ないミステリでもある、読み応え抜群の作品だと思います。
2件・1件
けーさん、素敵なレビューをありがとうございます! 2周も読んでくださったのですね~! ありがとうございます。 ホラーとミステリの両方を楽しんでいただき、とてもうれしいです。 18ページの紘大のシーンは、違和感を感じさせつつ、気が付かれないように気を付けたので、2周目に悲しくなったと言ってくださって、うれしいです。 あちこちに隠した(つもり)の伏線の存在に気が付き、 気に留めていただいたことは、作者冥利に尽きます! そして南由を好きになってくださって、ありがとうございます。南由は天使のようにいい子として書いていたので、私も大好きなキャラです(*^-^*) 丁寧に読んでくださって感謝です!
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