ともなり

超・妄想コンテスト『忘れもの』裏会場銅賞受賞作品
説明が乏しくかなりの読解力を求める作品だと思いました。恥ずかしながら5回ほど連続で読み直させていただきました。まず驚いたのが訴えかけてくる寒さ。凍てついた寒さの描写を何と登場人物の様子で引き立てると言う高等なやり方には舌を巻きました。細かな説明がないので憶測になってしまいますが、別居していた父親に母をさつがいされた主人公と、知恵おくれの為に虐待を受けて来た少年のやり取りは、一見すると一方的保護に見えるも実際は様々な意味で寒さの中暖を取ろうと寄り添っているようにも見え。感情を置き忘れたと言う主人公が冒頭からそれを否定する行動をしているのも興味深い所でした。最後に忘れ物を取りに行く主人公、しかし彼自身既に取り戻していることを自覚していて、だからこそそうするのだなと思いました。始終外も内面も寒さにさらされる作品でしたが最後にぽっと温もりが生まれるのも素出来だなと思いました。ただただいかんせん情報が少なく、一度では読み解くのに苦心すると思いましたのでこの賞に留めさせていただきました。
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