深い夜の闇に潜むのは、自意識の塊という怪物である。(さくを)
まず、出だしの表現に心奪われた。描くのは眠れぬ夜の静寂。にも関わらず、作者は『しーーんという音』だと表現しているのである。 言い得て妙だ。考えてみれば、この世に本物の静寂など存在しない。時計は秒針を刻み、冷蔵庫は低くうなり、上の階の住人が床を軋ませ、遠くで救急車のサイレンがドップラー効果していく……。静かな夜にこそ、さまざまな騒音を私たちの耳は敏感に拾うのだ。ますます眠れない。 もしもその音が止んでくれたとしても、今度は布団の衣擦れ、無意識に漏れたため息、さらには自分の心音まで聴こえて来るからたまらない。 そして、何にも増してうるさいのは、自分自身の思考であることは言わずもがなである。 例えるならそこは、ミラーハウス。四方八方に自分の姿しか映らない。そこには主観しかないから、その思考には前進も後退もない。まさに出口のない迷宮。眠れるわけがない。 それどころか、無数の自分を眺めていれば、自身の形を見失ってしまうかもしれない。同じ漢字を100個並べて眺めたらゲシュタルト崩壊するように。 さて、主人公のマヨはα‬波だのヨガだのと、ありとあらゆる手段を使って眠りにつこうとした。でも『しーーん』はとっくに迷路の入口、一度足を踏み入れれば、自力ではなかなか抜けられないのだ。 そう、自力では。この迷宮の鏡を割れるのは、間違いなく他者なのである。幸運にもマヨには、その相手が存在していた。 他者と繋がった瞬間。相手を見、相手を聞き、相手を思う。自己を主観で映す鏡は目の前から消えるのだ。そして、その相手を通し、相手と比較して見える自分自身は、主観ではなくちゃんと客観視できている。 『わたしはこんな風にちゃんと輝いてる?』 多分、お互いにそう思いながら自分の存在、自身の形を確かめるのだ。 きっと人は、ひとりきりでは自己を保てない。だから他人と繋がろうとするのだろう。 持つべきものは友。なんでもない話で笑い、心地よい言葉や声にまどろむ。それだけで、人はひとりじゃなくなれる。鏡を割ることができるのだ。 しーーんはもう聴こえない。 ……とかなんとか小難しく考察したけど、私は作者のみくと友人になれて、心からよかったと思う。それを再認識できた、とても素敵な物語。ありがとう。この作品もみくも大好き❤ 余談だけど、小川のせせらぎとかジョボジョボうるさくて余計眠れんの私だけ?笑
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さくらたーーーん( ;ᯅ; ) 全米(私がだけど!)が泣いちゃうレビューありがとう(´இ□இ`。)° 岩波文庫の哲学か文学を語る本みたいな雰囲気からの、小川のせせらぎジョボジョボうるさくて眠れんの私だけ?wになるというこの文章の緩急よ! なによりも。私がこの拙い短編で伝えたかったことを十二分にわかってくれていることかはっきり伝わってくるレビューに滂沱の涙😭 めちゃくちゃうれしくて本当に涙でました!本当にありがとう!!! 最後にジョボジョボうるさいっていってるけどwさくらたんはわたしの清流みたいだといつも思ってる。 透明でキラキラしてて。その水を飲むとシャキーンとして生き返ったり、覚
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喜んでいただけてなにより❤ 文庫本後ろの『解説』風に書いたんだけど、解説なんておこがましいので『考察』です。 実はもっと書きたいことたくさんあったんだけど文字数制限に引っかかりました!!笑
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