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どこかで見たことのある物語はもういいかな、という方へ
「現在の文明社会が崩壊した未来の物語」と聞いて最初に思い浮かべるのは、いわゆるディストピアものだと思います。秩序の失われた世界で、生き残った人々が殺し合い、奪い合い、醜い争いの中で主人公が希望を見つけていく……とか。 この作品もそういう類の物語なのかなと思い読み始めたら、全然違いました。この世界には人々の普通の暮らしや普通の良心が生き残っていて、人々は文明崩壊前の日常をできる限り続けようと努力しています。 印象的だったのが主人公たちがショッピングモールに物資の調達に行くエピソードです。モールでは店頭に残された商品を、誰もが必要な時に必要なだけ持ち出して良いという暗黙のルールが守られています。 何もかも根こそぎ奪っていく奴がいるんじゃないか、と疑念を抱くようなシステムですが、考えてみれば、法律や警察がなくなったからといって、普通に生きている普通の人々が、私や私の家族や友人が、そんなことをするだろうかとも思うのです。 もしかしたら、殺し合い奪い合うディストピアものより、こちらの世界観の方がより説得力があり、リアルなのかも。東日本大震災の時のことをちょっと思い出しました。悪事を働く人や利己的な人はもちろんいましたが、それでも多くの人々は善良なままで、互いに励まし合い、良心や忍耐を簡単には手放さなかったですよね。この物語の中にもそういった人間の底力のようなものを感じ、とても嬉しくなりました。 そんな考えさせられる世界に、安楽死という考えさせられる重いテーマが横たわっているので、登場人物はさぞ深刻な顔をした奴らなんだろうと思ってしまいますが……それもまた裏切られます。主役の3人のかけ合い、めちゃくちゃ楽しいです。 どこかで見たことのある物語はお腹いっぱい、という方におすすめしたいオリジナリティあふれる作品です。
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素敵な感想をありがとうございます!某ディストピアみたいにヒャ○ハー!してる世界観も魅力的なのですが、 実際は暴力的じゃなくて、超優秀でもない、いわゆる何の特別な力を持たない普通の人が世界の大半を占めるわけですがら、衰退していく世界は想像するより優しいんじゃないかと思い世界雰囲気を設定したので、読者の方に伝わっているようで嬉しいです。 主人公3人ののんびりしたきょうだいみたいな雰囲気も気に入っていて(内容的に鬱鬱しい暗い空気ももちろんあるのですが)、どんなことがあろうが最後は前を向いて歩いていける力を人間は持っているというのがこの話の柱にしたいポイントです。 第一部は終わりましたが、第二部で
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