柚木ハッカ

細部まで描くのが登場人物の深みとなっている
とあるチェーン店の会話から始まる物語。そに時点でグッと引き込まれた。細部まで描かれる情景描写や会話。それによって登場人物のキャラが際立っている。仕事は好きじゃないけど、やりたくないってわけじゃないどこにでもいる店長と店員。それがすぐに思い描けるのは相当に練って書いているからだと感じた。 そこにやってくるひと組の家族。それを自分の父との確執と重ね合わせる主人公。そのへんが非常に巧みだと思った。 あえて自分のカレーを出すことを決めるところが若干弱いかもしれないが、それはそこまで気にならなかった。それに関してはケンのキャラクターが大きな役割を果たしているのかもしれない。 最後までこの家族がなにをしにやってきたのか、主人公が小さい時になにが起きたのかははっきりと言葉では語られない。それが分かりにくいとする読者もいるだろうが、私はそれが逆に海外小説っぽくて良かった。それは個人の趣味の範疇になるのだろうが、言葉で書かれると一気に醒めてしまう場合もある。それに最後の「北道を引き返す」という表現で十分に伝わることだろう。 あえて言葉で伝えないという表現方法は難しい。ともすれば読者に伝わらないからだ。それをあえてやってのけたこの作品は本当に素晴らしい作品だと思う。 難しい言葉で書かれているわけではないので読みやすいし、学生にもぜひ読んでほしいと思った。
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柚子ハッカさん、細かなところまで読みこんで下さって評価を頂きありがとうございます。これからも創作にますます励みたいと思います!
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