(仮タイトル)蜜原みな子傑作集に寄せて②
 私はこの作品を三度読み返し、氏の作品世界に多少近づけたかと思うが、まだ十分ではない。  この作品は一読しただけでは、あまりに漠然としていて物語世界が把握できない部分がある。だが読み返すうちに驚嘆し共感し、この作品の虜になってしまう。  読者諸賢はどうかこの作品を一読だけで済ますことなく、何度でも読み返すことを心よりお勧めする。  作品の世界が無限の広がりを見せ、読者はいつのまにかその世界の住人となり、作品の登場人物と共に如何に生きるかを作者より問われるのである。  主人公たちと共に模索する作品世界は、読者へ新しい発見と希望を必ずや与えてくれることを確信してやまない。  最後になるが、小説サイトで純文学をめざす人々に呼びかけたい。  おのがパソコンに入力する前に、まず多くの優れた作品を読む方が必ず新しい発見と希望をもたらすであろう。  つまらないものが純文学と考えている人々に呼びかけたい。  純文学は面白く、そして売れるのである。  夏目漱石の作品が次々と売れて莫大な富を遺族にもたらしたことを、我らは忘れてはならない。『虞美人草』は私の好きな作品のひとつである。漱石の作品は滅法面白いのだ。  現在も活躍する作家で、村上龍の魅力的な作品群も忘れてはならない。  『Wish』のもうひとつのキャッチフレーズとして、 「思索する人間が読むエンターテイメント」 を挙げたい。  この作品が呼び水となって、別の作家による多くの新しい傑作が生まれることを望んでならない。 (最後に)  蛇足ではあるが、私の愛読する澁谷沓さんの作品に続き、蜜原みな子さんの傑作集が刊行されることを前提に、僭越ながら蜜原文学の魅力をしたためてみた。  早晩、それは実現されるであろうが、無名な私の拙文のかわりに多分そうそうたる著名人の解説が並ぶことだろう。                            了        
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 まずは倉橋さん、作者が涙ぐんでしまうほどの感想ありがとうございます!  今、作者はいろいろ思うところあり「凍結中」なのですが、にも関わらず、これは書いておかないと……と思ったのが『Wish -ひそやかなねがい-』でした。    さて、倉橋さんやこれを読まれている諸兄姉は、ポーランドの哲人作家、スタニスワフ・レムの『完全な真空』(邦訳は国書刊行会から)をご存知でしょうか?  じつは存在しない書物の「架空の書評集」です。「蜜原みな子傑作集」ときいて、まっさきに『完全な真空』を思い出しました。    「最後になるが~」から返信いたしますが、たしかに純文学はつまらない作品もあります。が! 音楽でいえ
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 拙文に過分なお礼ありがとうございます。それからその本は、実は蜜原さんが以前に書かれるより前に何かで読んで知ってはいました。書くより先に読む。そう言っている本人が読まないのは大変恥ずかしいことなので、この本についてはきちんと探してみます。それから蜜原さんにはハッキリ云いますと、大江健三郎は初期の作品は読んでいるし、映画も観ています。『我らの……』は例の逆ギレ事件で興味を持って、まだ二十歳そこそこのときに読んで「何、これ?」状態になっています。『沖縄ノート』やそれを巡る裁判についてもかなり詳しく読んでいたので本当は嫌いではありません。封印作品については、浅沼稲次郎を狙った犯人への怒りから一気に書
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