「スパチャ」 ある配信で「私はスパチャした人間の職業がわかる」という人がいた。 本当だろうかと、面白半分で色々な人がスパチャを投げた。 正解率は50%くらいで、案外高いななどとリスナーは盛り上がった。 スパチャを投げた人間が素直に正解を言うとも限らない。 そして、その逆だって十分にありえる。間違えているのに、正解ということだってある。 その意見は正論ではあるけれど、情緒に欠けている。 当時のリスナー達も私と同じ意見だったのだろう。 茶々がはいることはなく、終始和やかに配信が進んでいるように見えた。 【赤チャット 10,000円 ずっと見てます。】 だから、そのチャットが飛んできた時も、私を含めたリスナーは特に不審を抱かなかった。 高額なスパチャに、少しテンションが上がるくらいだった。 けれど、その赤スパを見た時、配信者さんの空気が変わったのを私は感じた。 声のトーンが下がり、明らかにむっとした口調で配信者さんが言った。 「落とし物は、交番に届けてください。ネコババしたお金はいりません」 私も、他のリスナーも配信者さんの意図が分からず、チャット欄がハテナで埋まった。 【赤スパ 10,000円 拾い物だから、持ち主に返すんです。】 その赤スパが流れた途端、配信画面が止まり、そのまま配信は終わってしまった。。 次の日、配信で投げられたスパチャは全額返金がされたらしい。 機会があって、私はその時の配信者さんと話をすることがあった。 ぶっちゃけ、配信者さんと私は元々大学の同級生で配信の内容など相談に乗っていた。 なので、配信が切れた次の日に、直接、話を聞いたのだ。 「私ね。スパチャで職業がわかるっていうのは嘘なの。 本当は、投げられたスパチャがどうやって稼がれたものかがわかるの。 あの時の赤スパ。 最初は、道で財布を拾ってる男の人の姿が見えたの。 だから、ネコババするなって言ってやった。 その次の赤スパ。 男が拾った財布の中に、私の学生証が見えたわ。住所が丸見えだった。 それと、背後に見慣れた観葉植物が見えた」 だから、すぐに部屋から逃げ出して警察に駆け込んだらしい。 配信者さんは、ガーデニングが趣味で、ベランダで観葉植物を育てていた。 男は配信者さんの部屋のベランダからスパチャを打っていたそうだ。

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