君ちゃん

 しかし、学校の校庭に他の同級生の女の子を始め、多くの子供が集まってそれぞれ遊び始めると、私はなんだか一人でいることが無性に恥ずかしくなってきた。  そして悩みに悩んだ末、勇気を振り絞って私は中出君達のところに向かい言った。 「一緒にいれーて」  この一言を口にするのにどれ程勇気が必要だっただろう。  断られたらと思うだけで怖くて、胸はずっとドキドキしていた。なんせ俺がそう言った相手は、別に仲が良い友達でもなければ、むしろ嫌われている相手である。  しかし予想外な事に、中出君は 「いいよ、一緒に遊ぼうぜ」 と言ってくれて、私の顔は多分パァっと明るくなっていただろう。だが、そうは問屋は卸さない。  中出君と一緒にいた羽鳥君は、あからさまに嫌な顔をして 「はぁ?なんでこんな奴いれんだよ。絶対嫌だ」 と口にしたのだ。その瞬間、私は再び消沈してしまう。  まぁそれも当然だし、そもそも羽鳥君は当時私が特に嫌っていた同級生の一人だ。今でいえばスネ夫のような感じの子で、お世辞にも当時の彼は良い奴とは言えないような子だ。当然自分も同じように悪い子であったが、少なくとも友達と一緒に遊べている羽鳥君の方がまだ私よりマシだったかもしれない。  だけど、その羽鳥君の言葉を聞いた中出君は、物凄い勢いで怒り始めたのだ。 「だったらお前が抜けろよ、羽鳥。じゃあ一緒に遊ぼうぜ〇タン」  〇タンといつの間にかあだ名呼びされた私は驚く。  いやそれ以前に、自分の事を嫌っていた私をそんな風に仲間に入れようとし、更にはそれに対して冷たい言葉を口にした羽鳥君に対するその言葉に驚きを隠せなかった。  と同時に、なんとも言えない気持ちに私はなる。  自分を仲間に入れると認めてくれただけではなく、その優しい言葉に子供ながら心が震えた。  羽鳥君はそれでも嫌そうな顔を続けるも、流石にここで仲間外れにされるのは嫌だったのか、そのまま中出君の言う通りにした。  そして中出君の相方とも言える田中君は特に何も言わずに、ボールを俺に蹴る。  それだけで仲間に入れるのを認めてくれたとわかった私は、田中君の優しさにも感謝する。  これが私が友達から受けた初めての優しさ、そして、恩というのを感じた初めての出来事だったと思う。 ※※※続く※※※
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 その後、私はまるで中出君の子分のように懐いて彼と一緒にいた。クラスで一番力が強く乱暴者だった私は、まるで借りて来た猫のようにおとなしくなる。  すると周りも変わった。いや、私に対する周りの子の対応が変わったというのが正しい。  私もそれから人に対する思いやりというのを覚え、できる限り周りに優しく接するようになると、周りも私に優しくなったのだ。人に優しくすると自分も優しくしてもらえる。それを教えてくれた中出君には今でも感謝している。  そんな中出君は翌年、親の都合で転校してしまったが、今でもあの時の彼の言葉を忘れない。  それがあったから、今の自分がいるのだと思う。  そこで私はもう一度考え直

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