シリーズの転換期になるであろう、傑作です
ボーダーラインシリーズ5作目は、主人公のヴァンが活躍する設定年代より以前の時代に遡った前作に続いて、重厚かつセンシティブな内容を丹念に描いた傑作でした。 前作でも感じたことですが、元ネタにされたという事件だけでなく株価の動向・操作など、どれだけの資料を読み込み噛み砕いた上で「架空の設定」の中に落とし込んだのだろうかと、その苦労を考えただけで気が遠くなるような思いです。 そしてその物語は、終盤で「厳罰化時代」に疑問を抱く主人公が追い詰められ「闇落ち」してしまうのではないか、クリストファー・ノーランによるバットマンシリーズ『ダークナイト』のように陰で悪を裁く存在になるのかも?などと勝手に心配していたのですが、よき先輩方のおかげでそうならずに済んでほっとしました。 しかしその代わり、主人公ヴァンと同期でヴァンと対照的な「出来のいい警察官」として描かれていたトーマが「別班入り」してしまうのは驚きでした。前作で登場した人物の「再登場」にもわくわくしましたし、今後トーマがシリーズの中でどんな役割を果たすことになるのかも期待したいです。 更に今作では、今まで警察官特有の技術として描かれていた特殊能力が「一般人」にも使えるという新たな設定が加わり、これが今後のシリーズにどんな影響を与えるかにも注目しています。今作では「善意の上の犯罪」に利用されていましたが、根っからの悪党が特殊能力を用いて犯罪行為に及ぶ可能性もあり得るのかなと。そしてその時ヴァンは、トーマたちはどんな対応をすることになるのか・・・? そういった意味を含めて、今作はシリーズ上で重要な転換期となる作品だったのではないかと思っています。まずは大作の完結、お疲れ様でした。そして今後のシリーズにも大いに期待しています!
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さらさん 長くそしてとても丁寧な感想を頂き本当にありがとうございます。また最後までお付き合いいただきありがたい限りです。 今回は森永グリコ事件、森永ヒ素ミルク中毒事件が元ネタでしたが、それ以外にもPPA(元ネタはTPP)や空売りなどを始めとした金融に関連した話、政治資金規正法などいくつかの要素をオマージュしつつ絡ませました。 ある程度話としてうまく繋げられたらいいな、と思って書いておりました。 ヴァンの闇落ちについては、普段のように前向きな姿だけではなく、自己矛盾に苦しむことで人間らしさを加えつつも、それでも前を向くことで彼の強さを書いてみたかった、という感じです。 苦しんで堕ちる者、
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