笹目いく子

『賭博雷同』完結おめでとうございます。素晴らしかったです!! 出雲さまにしか書けない、稀有なエンタメ・ヒューマンドラマだと思いました。 『おとメシ!』も凄かったですが、そこからどれだけ進化しておられるんだろう…!と震えました。 喜美候部のキャラクター、すごくいいですね。兼続との悲痛な別れや、最後お料理教室にいる何気ない場面など、胸に食い込むシーンがたくさんありました。彼女を通じて、一見社会的規範から逸脱した人々に思える「ギャンブル依存の人々」が、「どこにでもいる普通の人」なのだということがたいへん説得的に伝わりました。オミオミの誠実さややさしさ、潔さも非常に心打たれるものがあって、彼の弱さやダメさ加減も含めてとても魅力的です。 私自身はギャンブルもしないし、そんなアンダーグラウンドな世界には近づきたくない…という感覚ですけれども、まったく抵抗なく楽しむことができました。 「楽しむ」というとテーマ上語弊があるかもしれませんが、いくらでも露悪的に、救いのない内容にもできるところを、あえて平静な目を保ち、読者が受け取りやすいスタイルを保って語りきったこと、見事なバランス感覚をお持ちだと僭越ながら思いました。 この作品だけでなく出雲さまのご作品を読んで感じるのは、どうしたらこのテーマが伝わるのか、読み手が共感して楽しんでくれるのかを常にご念頭に置いておられるということです。 格好良く見せようとか、わかってくれなきゃそれでいいよ、どうせついてこられないだろう…というのではなく、もっと伝わる言葉があるはずだ、話運びがあるはずだ、とぎりぎりまで努力を惜しまない姿勢をひしひしと感じます(自分を振り返ってできているか怪しいです…)。 ひとえに、どんな社会の側面にも、そこでもがく人々にも、等しくやさしく偽りのない目を向けようとする出雲さまのお人柄がそうさせるのだろうと勝手に想像しました。 出雲さまは、テーマ、キャラクター、ストーリー、背景知識、構成力、表現力、すべての質が高い書き手でおられると思いますが、構成力が異次元に高い!と毎回感嘆します。ただ小手先のテクニックで驚かせようというのではなく、きちんとした必然性があり、ストーリーに深みが生まれているのが見事だと思います(本格ミステリーもきっとお書きになれるのでは…と思います…!)。 毎度長くて申し訳ありません。続きます…
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