他人のために生きるのか、自分のために生きるのか
まるで『君達はどう生きるか』(原作の方)みたいな啓蒙的なタイトルをつけてしまいましたが(笑)💦 今作『Standing』は青年が進路の分岐点に立つ姿をこまやかに、繊細に、かつ、丁寧に描いた作品です。 高校1年の巧くんは絵を描くのが好きなことから美術部に入ります。憧れの先輩が気になりつつ、絵で食べていく未来に漠然と疑問を抱いた矢先、推しの〈絵師〉さん(※敢えてこの言い方をさせて下さい)の急死にショックを受けます。 それを発端に、幼き日に失った母親・まりえが絵を嗜んでいたことを知り、医者の祖父、父から進路について諫言されます。 「他人の為に生きることは、自分の為に生きることより劣る」 冒頭の言葉は、父・匡久が巧に勧めた哲学者・セネカの『人生の短さについて』からです(※なお、私の雑な要約なので実際とは異なります💦) この巧くんてば、模試でT大理Ⅲを〈A判定〉出てしまう秀才! ぱっと見チャラいのにズルい(笑)と愛され要素抜群なのですが、ゆえに進路に戸惑います。 「人を助けて、儲けちゃいかんのか」 大病院を経営する祖父の一撃がなんとも鮮やか! (ちなみにこの祖父、巧くんの賭け囲碁に付き合ってくれるチャーミングな方です♡) 器用貧乏ゆえに進退に揺れ動き、愛する絵師さん、そして在りし日の母・まりえを想いながら巧くんが出した結論は……? 本作は、巧や兄・奏、父母達の日常を描いた〈橘家シリーズ〉に含まれます。 傍から見れば大きいとは言えない出来事が、当人にとってドラマであることを優しく、細やかに、丁寧にすくってくれるお話ばかりです。 今作を読み、〈橘家シリーズ〉は一貫して〈人生の歩み方〉の物語だと、我が身を振り返りました。 自分を生きること。 哲学的な問いでありながら、自分を取り囲む人々への関係を再認識する。愛と気付きに満ちた作品に、読後は胸がほっこりと温かく、澄み切っていることを実感します。
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未苑さん、素敵なレビューをありがとうございます😭✨ 〈人生の歩み方の物語〉……。そんなふうに深く捉えていただいて恐縮です💦 たくさんの受験生を指導してこられたであろう未苑さんのお言葉、何度も読み返しております。 祖父と父の対比を出したかったので、祖父の言葉を捕まえていただき、とても嬉しいです。 そして、昭和のおじいちゃんをチャーミングと評していただき、ありがとうございます。笑。 読後にほっこりしていただけたとのこと、大変光栄です。 お忙しい中、お時間を割いていただき、素晴らしいレビューをありがとうございました。 初期から応援してくださる未苑さんのお言葉、本当にありがたいです。 今後とも
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