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霧の都のヘブンズテイカー3 〜《残され人》とホワイトチャペルの女〜
秋月 晶
2024/5/24 11:27
気づかされるのは時の価値。
『霧の都のヘブンズ・テイカー3』に寄せて、レビューを記します。 ※多くのコトを書きたいので、ですますの丁寧語は廃していきます。 今作は作者・武城統悟さんの代表シリーズの3作目となる。 1、2作も上質な作品であり、それが土台にあるから、今作がさらに良かったのは語るまでもないだろう。 このシリーズは、端的に説明すると、すでに死んでいるのに何故かまだ肉体が生きている《残され人》を見つけ出し、その魂を送天する《天国への案内人》の誠心を描いた物語。 主人公キョウジは、いわゆるスーパーヒーローではない。 対象の《残され人》を見つける能力はあるが、その精度は決して高くなく、また、武装兵を容易く退けられるほど強いわけでもない。 けれど、誠実にして優しく聡明な、いわば『善い人』であり、その親近感が、キョウジを主役にし、彼が育む人との繫がりに現実感を持たせる因となる。 作品は、19世紀末の英国が舞台で、特に冒頭に、その雰囲気が精しく書かれている。 そこで体感した映像、あるいは英国の空気を抱いたまま読み進めれば、読み手の心理は正しくそこに在り、日本人である主観より、物語の視聴者という立場になれるはずだ。 今作では、娼婦と関わりを持つのだが、性的な場面はなく、むしろ体を売らなければ生きていけない女の悲哀や、それに伴う気丈さを前面に置き、様々な感情を宿しながらも自立する、覚悟を持った個の女性に焦点を当てている。 これがまた物事の上澄みを掬うものではないため、常に孕む危機感の演出となって作品を際立たせているのだ。 もちろん、シリーズ物である優位性、つまりキョウジやその背景、一部場面において詳らかに説明せずとも良い点はあるが、それでも武城さんは新規読者に対して配慮を忘れず、ちゃんと標を立てて迷わず読み進ませてくれる。 キャラ造形や構成が緻密なため、上質なヒューマンドラマにもなっている。 私が特に感銘を受けたのは、エピローグだった。 話は逸れるが、逝去した日本のシスター・渡辺和子氏が遺した言葉がある。 《時間の使い方は、そのままいのちの使い方になる》 これは、本シリーズの下支えになる考え方であり、武城さんの誠実な人柄の礎石ではないかと思う。 今作に限らず、シリーズ全てを読んでいただき、独創的かつ感動的な物語を堪能してほしい。 『霧の都のヘブンズ・テイカー』は、こころに触れる作品だ。
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武城 統悟
5/24 19:53
秋月さん 拙作『霧の都のヘブンズテイカー3』について、こんなにも丁寧な感想をいただきありがとうございます。 あまりにも良いことを書いていただいているので、どう対処してよいのかわからず、とりあえず正座しながらコメント書かせてもらってます。 さて、このシリーズなのですが、人と人のつながりについて何か書けないかなぁと柄にもないことを思ってしまい書き始めてしまったシリーズです。 ただ、人間慣れないことをしちゃダメですねぇ。 日頃くだらないことしか考えてないのに、思いついちゃったからといって絆をテーマにしたような話が書けるわけもなく、やたら苦戦しながら書いてます(苦笑) それでも懲りずに3本目を
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