灰黒猫

切れ目ない独白から感じられるやるせなさ
「web小説を書くときは、改行や空行を多くして読みやすく」とのご意見が多い中で、自分の感想は少数派なのかもしれません。 ですが、冒頭から長く続く空行のない独白体の連なりからは、男の空虚感や疲労感、やるせなさや苦しみなど、自覚できない深い哀しみのようなものが切々と感じられました。 もし間に空行があったら、そういう、男の抱える息苦しさのようなものは感じられなかったかもしれません。 家への道を歩いていても、どこか現実感がない中で、犬が吠えているのが「現在地·現在時間の確認」のように思えて、よかったです。 凄惨な場所から今にいたるまでの具体的な描写はなくとも、言葉の端々からさまざまなことが想像できました。 家に残されていた手紙にも詳細な説明はないので、男の記憶が鮮明になることはないのですが、 「風呂に入って、飯を食って仕事を探そう」と思えたことと、止まらない涙から、 一枚の手紙が定まりのなかった男を今の現実につなぎとめたように思えて、よかったです。 戻ってきても何もない現実で、地に足をつけて生活をしようと思えるのは、ささやかなことのように見えながらも実はすごい変化だと思いますので。
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灰黒猫様 コメントありがとうございます。 とても素敵なコメントを頂き、感無量です。恥ずかしながら、初めてコメントを頂いた為、嬉しくてたまりません。 他の作品ぜひ読んでいただけると嬉しいです!
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