綺麗事だけではない、よりリアルなアオハルを
 主人公の汐田はある日、高校の近くの公園にある東屋で不登校女子生徒・蓮見と出会う。汐田の作る美味しい弁当の味と優しさで蓮見は立ち直り始め、汐田と一緒ならと登校を決意するが……  思春期、アオハル、未熟な年代。様々に呼ばれる時間を過ごす中で、リアルでは純粋なだけではいられない深淵の狡さを二人とも持っていたのが印象的な作品でした。でもそれは悪い意味ではなく、互いに弱さを見せあった証拠であり絆でした。「助けているようで助けられない」といった絶望感が、「助けていたようで助けられていた」と気付いて世界を切り拓いた背中が見えるクライマックス、そしてラストシーンは秀逸。ユーモアと未来のある爽やかさに、心地良い読後感をいただいた短編小説でした。
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