七星満実

その姿は見えなくなっても、日々の暮らしに違う形で生きている
細部に渡る丁寧な情景描写が臨場感を生んでいて、時間軸の前後と共に主人公の現状と心情が紡がれるストーリーテリングが心地良い読み応えを覚えさせてくれました。 本作を拝読して圧倒的に感じたのは、現実の厳しさに直面した時、家族の繋がりはすべからく、間違いなくそれに寄り添ってくれるということ。 家族との関わり方は人それぞれですが、この物語では登場人物達が主人公に向ける何気ない言葉や行動に愛が散りばめられており、本人も意図せずそれを享受しながら次の世代にもそれを託すような意思が感じられました。 その姿形が消えてしまっても、それぞれの日々の中で受け継がれた愛は死なない。 導入とは対照的なラストに、一切理屈めいていない暖かで強いメッセージが伝わってくる、素敵な作品でした。

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