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凍土に光射して
石亀じだん
2024/11/14 21:05
凍土に射した光は、それは希望の光だったのだろうか
『凍てつく風が頬を鞭打ち、吐く息は・・・収容所の粗末なバラックは、まるで巨大な棺桶だった』で始まる、この物語。 最初から最後まで、その地を凍らせるマイナス30度の空気が張り詰めていた。 今では、シベリア抑留ということが本当にあったことだと信じる人はほとんどいないことだろう。 それは、こたつでミカンを食べながらテレビを見ている世界からは想像することすらできない極寒の生活。 その地で、原生林を切り開き窪地をうめ、そこに鉄道を敷くという強制労働がのしかかる。食事だって満足に与えられなかっただろう。 そこで出会った心優しい少女。どうも彼女の戦争の犠牲者らしい。 彼女とのかかわりは、極寒の地で心にぬくもりをもたらした希望の光であったか。 そんななか、この収容所に開放の知らせが届いたという。 それは、これで日本に帰れるという喜びだけでなかったとか。 1950年、日本に帰る引揚船で彼が見つけたものは。 そして帰国した彼が、目にした故郷は。戦争は確かに終わってはいたが、まだまだ物資も満足になく、混乱と貧困の中にあったことだろう。それでもまだましで、「復興」に向かっていたから。 彼は、帰国できたことを素直に喜べていない。何故だろうか。家族もいて、婚約者も待っていて、結婚したというのに。 それは、やはりあの地でもらったぬくもり。 最初から最後まで、切なく何とも言えない戦争の怖さが伝わってきます。すごい文章力で、すごい迫力でした。 でも、あなたが帰国したことを、それを「贖罪」することなどどこにもないと思います。あなたに何の罪もない。悪いのは戦争で、戦争を起こした人です。 彼女の幸せを祈ること、それが今あなたにできる最大で、最善のことでしょう。 すぐ目の前にシベリアが広がっているように思えました。とても荘厳な物語に感嘆しました。
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遠野 雨弓
5日前
長く丁寧なレビュー、ありがとうございます。 過分な評価に身のすくむ思いです。 これからも話を紡いでいきたいと思います。よろしくご指導ください。
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石亀じだん
4日前
いえいえ、とんでもありません。 本作のすばらしさをきちんと表現できたかどうか。 これからも応援させていただきます。
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