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遠矢九十九(トオヤツクモ)
遠矢九十九(トオヤツクモ)
2024/11/18 12:39
◆CM◆ * * * 「この島は『楽園』なんかじゃない。 悪魔の島なんだ」 * * * 怒り狂う男の額から伸びる、金色に輝く糸。 全身を光の龍に包まれた男子が、その糸を握り締め、凛然と男と対峙する。 「入っちゃ行けない場所に勝手に入ったせいで命を狙われる。 それは世界中どこでも有り得ることで、国や地域によっては日常だ。 だから、それは俺たちが謝らなきゃいけない。 だけどこの子たちは違うんじゃないのか!? この島の、お前の、私利私欲のために連れ去られてきて無惨に殺された罪なき命は、一体何千、何万だ!? だから!! せめてこの子たちには、お前が謝れ!!」 * * * 「クロノ君!?」 倒れたクロノを助けに向かう朝比奈。 「え?ちょっと! やめとけって!!」 逃げ続けるめろみゆが叫ぶ。 「自分だけ助かってもしょうがないんだ!!」 「自分だけでも助かんねぇとしょうがねぇって!!」 * * * 一糸まとわぬ肉体を返り血に染めた女が、クロノの頸部へ目にも止まらぬ蹴撃を浴びせる。 クロノはすんででかわし、女の胸元から生えている金色の糸へと指先を滑らせると、 「てめぇの足クセの悪さはこいつのせいだろ! ヘビクイワシぐらい俺でも知ってるぜ!」 糸を一気に引き抜いた。 * * * 「そもそも人間は遥か太古からあらゆる方法で生命を利用し、その成果によって進歩を続けてきたであろう。 生きたまま、分泌物や身体の一部、あるいは亡骸を、食用として、日常の道具やその材料として、科学や医療の発展などにも寄与してきた。 今さらそこに何の罪を問う? そしてそれは、人間の命とても同じことだ。 人は人のために人を使う」 * * * 「きっとこんな過酷な世界に生じてしまった最初の生命たちは、一つの『約束』をしたんだよ。 『それぞれがそれぞれにあらゆる可能性を探索し続け、長所を伸ばし続け、お互いにお互いの短所を補い合い続けて、誰か一人でも生き延びよう』 ってね。 それが進化、多様性なんだ。 誰が上でも下でも無い。 誰も特別じゃないしおかしいことなんてない。 僕らはただ、それぞれに自分を生きるように『約束』して生まれたんだ」 * * * 禁忌を犯した僕らは、見えないものが見えるようになって、死ぬ。
https://estar.jp/novels/26166798
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