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猛悪の牙
栄妙子
2013/2/6 12:12
全体に漂う濃密な狂気と、その狂気を追求する文章は良いと思います。 ただ、誰が何をやっているのか、いつの間に母親と刑事が入れ替わったのか、そして肝心の母親がどうなったのか、理解がついて来れない事が度々ございました。 これはおそらく主人公にとって、都合の悪い記憶を消してしまう癖から、説明がなされていないのだと思います。 そんな途切れ途切れの記憶と、狂気からくる殺人衝動はこの作品には不可欠でしょう。 そうかと思うと、刑事の視点から見た主人公の姿が描かれています。 ここで母親の謎やクーラーボックスに収めておいた死体(作中では処分する最中に疲れてしまったようです)の謎等が解明されるのでしょうか? 記憶が途切れる主人公の視点から見た一人称は、薄暗い路地で点滅する街灯に照らし出された映像のようで、サイコホラーに相応しいと思います。 最初は壊れた母親との二人暮らしと過去が、上手く描かれていて良かったです。 刑事が登場してから急に母親がいなくなり、主人公に好意を持って同居し始めてからは、理解がついてこなくて文章に悪酔いしてしまうのも、演出の一環に思えてきます。 世間で言う所の「狂人」が感じる「普通」に対する嫌悪感と恐怖が非常によくわかります。 けれど興味本位で読むと間違いなく、作品の狂気で悪酔いしてしまうので、気軽にオススメできないのが残念です。
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栄妙子