「ママただいま」 仏間を開け、珠希の遺影と向き合う美紀。 正樹はその隣に座った。 「さっき式を挙げてきたよ」 オリンを鳴らしながら一言だけ呟く正樹。 美紀もその音色を聞き入った。 残り少なくなった水仙は遺影の横の花瓶に挿してある。 花言葉には自己愛や片思いなどがある。 美紀は正樹の愛が欲しくまらなかった。 だからこの花を育てたのだった。 『愛をもう一度』 もう一つの水仙の花言葉を珠希にそう囁かされそうな正樹。 慌てて首を振った。 二人の邪魔をさせないために、祖父が秀樹と直樹を連れ出した長尾家。 正樹はベッドの上に座り、美紀の肩に手を掛けた。 でも美紀は又珠
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