「あなた、彼女居るの?」  <いつもの>、そう例えられる程に過ぎた、ある日の事。彼女は唐突ながらそんな質問をぶつけてきた。  いや、僕と彼女の関係を省みれば……今さら、と言った方が正しいのかも知れない。 「うん、居るよ」 「ふーん」  素っ気ない返事。ただ疑っている様子はない。なんせこの廃墟の中では――<嘘が吐けない>のだから。 「そう言う君は?」 「居るわよ」 「そうなんだ」 「ええ、意外だった?」 「いや、そんなこと無いよ」  そんなことは無い。なんせ彼女は美人だ。彼女くらいになれば周りがほっときはしないだろう。 「罪悪感は無いの?」
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「籠の中の鳥を、外には出さないの?」  彼女は肩越しに鳥籠を覗き込み、不思議そうに問い掛けた。 「なんで?」 「だって、その鳥は元は野生なんでしょ? 怪我も治ったみたいだし、空を飛べるなら飛ばせてあげれば良いのに」  その彼女の言葉に視線を落とし、名も知らぬ鳥をジッと見詰める。 「いや、その必要は無いよ」 「どうして?」  彼女の吐息が耳元を撫でる。 「こいつが外に出たって何も良いことなんて無いさ。籠の中に外敵も居ないし、寒さに震える事も無い。餌だって僕が与えてる……こいつは、この籠の中で一生を終えるんだ」 「残酷ね」 「そうかな?」  静かに呟かれた言葉に疑問を返す。
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