それだけに、ですね。 成瀬くんの 「まるで、大戦争時の、人身売買の行方不明者たちみたいだな」 という発言 これは全くもってその謎の有意を無に帰す、物語中最大の失言でした。読者としての僕は、この台詞にとてつもない喪失感を覚えました。たぶん、最後まで読むという約束でなければここで続きを読むことを諦めていたかもしれません。 読者は、知っています。真実かどうかはともかく、作者である青泉さんが、読者にたいして『奴隷がもうひとつの世界線の住人である可能性』を、意識してもらいたいということを。そして、あの図書館での展開があれば、誰でもそれを意識します。 あえて、あそこで真相に近づけさせる必要
2件1件
さて、悪い点ばかりあげるのもおかしな話です。本質的にはこの物語は面白いものです。僕はそう思います。 この小説最大の魅力は、僕のなかでは揺るがずサイキさんの母性愛です。全体通して、どことなく感じることがありました。 この物語は、とても優しい。人間が人間たる心を失っていない、ギリギリの理性でなんとかとどまり続ける世界。 闇の子を外に出すと決まったとき……放っておいたらさらにとんでもない厄災を起こすという危惧があったにしても、最初にそれを命じた人たちは揃って後悔をしました。母親も、我が子を出すことには反対していたが、結局名前は教えた。たぶん後悔があったんでしょう。サイキさんは、未来を見てすぐに
2件

0/1000 文字