(……続き) しばらく沈黙が続いたけれども、坂巻が言葉の続きをじっと待っていることに観念して、永瀬は言葉を繋げた。 「……誕生会が、あるから」 「誕生会?友達のか?今どき、まだ誕生会なんてするんだな」 坂巻は、あまりにも可愛らしい用事に、なんとなく気が抜けて、少し笑った。 「まあ、あんまり羽目を外しすぎるなよ?テンションが上がった友達に変なことをされそうになったら、すぐ俺を呼べ」 いつも言っている身の危険についての注意だけ、念を押す。 坂巻の手に寄って、永瀬は今は襲われることは皆無になったけれども、普段と違うイベント時には、人はハイになって何をやらかすかわからない。 しかし永瀬は。 更に
22件1件
(…更に続き) 「そうか、誕生日なのか…」 坂巻は、重ねてそう言った。 声音が酷く優しい。 「お前が自分の誕生日をあんまり祝う気がなくても、な……少なくとも俺には、お前が生まれた日を、祝う権利がある」 何故なら。 お前を、愛しているからだ。 「お前が生まれてきてくれて、嬉しい、雪晴」 髪を撫でていた坂巻の手が止まった。 その手は、永瀬の顎を掴む。 ぐい、と顎を上げられて、永瀬は少し抵抗した。 坂巻の言葉に、どうしてか涙が溢れてきたから、そんな顔を見られたくなかったのだ。 だけど坂巻は、彼に俯くことを許さない。 その溢れた涙をペロリと舌で舐め取って、強く繰り返した。 「お前は俺に愛されるた
37件

0/1000 文字