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「そ、その人がね、いつも私におやつを持ってきてくれてたんだけど――。1番最初に食べさせてくれたのが、キャラメルだったの」
そう。
あれもこんな感じの、手作りっぽいキャラメルだった。
私にそれを手渡してくれたお兄さんのことは薄らとしか思い出せないのに、何故か受け取ったキャラメルのことだけは鮮明に覚えているの。
あの時のキャラメルと、包み方まで本当に似てるなぁって思いながら、手にしたそれをパクッと口に放り込んで――。
舌の上。口溶けの良い優しい甘みが広がっていくのを感じた私は、ややして瞳を見開いて動きを止めた。
「頼綱! ――私……、この味、覚えてる!」
それは「こんな味」ではなく、紛れもなく「この味」と断言できるほどのインパクトで。
私が幼い頃からずっとずっと探し求めていた味だ!って思ったの。
売られている色んなキャラメルをアレコレ食べてみたけれど、どれもどこか違って。
決して美味しくないわけではないのに、「これじゃない」って実感するたび、泣きたくなるぐらい切なくなったのを思い出す。
私、この味をあのお兄さんがいなくなってからずっと。
まるで彼を求めるみたいにひとりで探し続けていたんだもの。
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【お知らせ】
フラれた寛道を幸せにして欲しいという読者の皆様からの要望から生まれたスピンオフです。
https://estar.jp/novels/25833157
※寛道救済プロジェクト★
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