『ホワイト・デーSS』と『鎮守の森』へのご案内

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『ホワイト・デーSS』と『鎮守の森』へのご案内

【お知らせ】 こちらに連載していた庭師テツの番外編『鎮守の森』は、中編として独立させました。 ↓ 移動先はこちらです。 『鎮守の森』 https://estar.jp/novels/25788972 64cc1d7d-5c48-4e48-879a-edc32b4b2194 『まるでおとぎ話』から生まれた、もう一つの和風おとぎ話。曼珠沙華が奏でる哀しみの鎮魂歌。 【ミステリアスな和風お伽話】 純朴で天然な庭師×神秘的で強気な青年(弟子) 『まるでおとぎ話』の攻・森宮海里の実家、森宮家で長年働く庭師のテツと、弟子としてやってきた柏木桂人の間で紡がれる、もう一つのお伽話。  桂人が背負っていたものは何か。彼が見つけたものは何か。二つの点を結ぶ緊迫の展開、謎が謎を呼ぶ……仄暗く切ない感情が迸るスピード感のある物語に仕上がりました。  2021年3月3日から中編として連載スタート。全68話・1ヶ月弱の短期集中連載になります。番外編連載時にタイムリーに読んで下さった方も、また楽しんでいただけるような内容にしたいので、スター特典で、桂人の過去を明かしたり、本編でもテツとのキュンと萌えるシーンも加筆しています。 【その後の日々】は、中編の『鎮守の森』完結後、再度こちらに掲載しますね。 **** おまけのSSです (3月14日 書き下ろし。同人誌の書き下ろしの続きのような話になっています) a74049f2-6fee-4eee-a44a-98e1bcb1f910   『いつもおれのそばに……White day』    仕事帰りに銀座の百貨店に寄ると『三月十四日はホワイト・デーです。恋人に甘い贈り物をしませんか』という広告が飛び込んできた。 「ははん、これのことか。病院の看護師たちが熱心に教えてくれたのは」  バレンタイン・デーに悉くチョコレートを受け取らずに断ったせいか『まぁ~海里先生にはステディな方がいらっしゃるのですね。私達でよければ恋人のハートをもっと掴む手段を伝授します』と、逆に言い寄られてしまった。  最近流行りだした『バレンタイン・デー』には、一ヶ月後の三月十四日に、恋人にお返しをする日が出来たそうで、俺も気にはなっていた。  しかし『ホワイト・デー』とは、良いネーミングだ。気に入った。  ホワイトは純潔の象徴で、白薔薇や、柊一と雪也くん兄弟が誕生した冬を連想するので、馴染み深い。 「さてと……どれがいいか」  色鮮やかな菓子がずらりと並ぶショーケースを眺めていると、柊一の喜ぶ顔が、ふわりと浮かんで来た。彼は楚々とした澄ました外見に反して、甘いものが好きな青年なのだ。  読む本も語らいも……接吻も、抱き合う時も……甘いものが大好きなのを知っている。甘い瞳で見上げてくれ、俺の心をいつも和ませてもくれる。  バレンタインの翌朝、君を抱きしめた瞬間の蕩けるような甘い表情を思い出すと胸が疼いた。あの日は雪だったが、今日は春めいているな。一ヶ月の間に、また俺の柊一への愛は深まった。   「お客様、こちらはいかがですか。大人っぽい贈り物ですよ」  ふと目にとまったのは、黒い包装のブランデーチョコ。これで君を酔わせたらどうなるか。いつもよりもっと乱れてくれるのか。もっと艶めいた大人びた君も見たいという衝動にかられてしまった。 「いや、結構だ」  しかし慣れないお酒で酔わすのは可哀想な気もして、グッとやり過ごす。次に目に入ったのは、まるでおとぎ話のピクニックシーンに出てきそうな黄色やピンク、水色などのカラフルな包装のチョコレートが詰まったバスケットだった。  籠の中には、卵形のチョコレートと兎のぬいぐるみが入っている。そういえば瑠衣が持っていた兎のぬいぐるみを、欲しそうにしていたな。よし! やはり君には、ダークなブランデーチョコより、こちらだ。 「これはイースターエッグですよ」 「そうなのか」 「キリスト教で生命の誕生を意味する『卵』がイースターのシンボルなので、チョコレートにしました。でも、これはお子様向けではなく、大人のイースター向けですが」 「ふぅん……」  英国にいた時に聞きかじったことはあるが、日本ではまだ広まっていない風習だ。だが冬郷家の広い中庭でイースターパーティーをしたら、優雅だろう。あの生まれ変わった庭を堪能するのに相応しい季節がやって来たのだから。  そうだ! ピクニックマットを広げ、そこに柊一を押し倒し、白昼堂々抱くのはどうだ? いや、待てよ。それは隣の屋敷から丸見えで、白江さんにまた怒られそうだ。ならば、奥庭の……秘密の庭園に移動だな。あそこに柊一を抱くための小屋でも、いっそ建てるか。  そういえばアーサーが、ふたりだけの秘密の小屋を建てたと自慢気に言っていたな。どれ、英国の庭でも真似てみるか。  手にはホワイト・デーの贈り物を持ち、柊一の甘い笑顔を思い浮かべながら、帰路に就く。  家では、愛しい人が俺の帰りを待っている。  こんな日常が、俺の毎日となった。  心に湧き上がる気持ちは、春の息吹そのもの。  愛する人に愛されている充足感。  今の俺は、柊一によって満たされている。 Happy White Day !  I am happy to be with you.   補足 ****  一応、上記で『了』なのですが、実はこの続きがありまして……その後の海里先生と柊一の様子(600文字弱)は『同人誌購入者のダウンロード特典』にしました。  同人誌のご購入者なら、商品購入ページより無料でダウンロードできます。やり方は・エッセイ62ページに画像つきで説明しています。同人誌はBOOTHにて取り扱いしています。
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