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2023年 特別番外編『Happy Halloween』海里&柊一
先に『ランドマーク』のハロウィンSSをお読みくださると流れがスムーズです。
https://estar.jp/novels/25672401/viewer?page=391
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「瑠衣! 待っていたよ」
「柊一さま」
「瑠衣、早速だけど頼みたいことがあって」
「何でしょうか」
到着するなり、屋敷内にある医務室に連れて行かれた。
まだ柊一さまのご両親様がご健在の頃、身体が弱い雪也さまのために作られた部屋で、最盛期には医師と看護師が常に待機していた。
「あのね、これを見て」
懐かしい気分で部屋を見渡すと、医療用ベッドの横のワゴンに何故か白い包帯が山積みされていた。
「あの、どなたか、お怪我でも?」
「僕も最初はそう思って心配したんだ」
「そうでしょう。心優しい柊一さまのことですから」
「でもね、瑠衣……そうじゃなかったんだ」
何故か柊一さまが悪戯っ子のように微笑んで、耳元で囁いてきた。
「あのね、今日はハロウィンだと知っていた?」
「えぇ、さっき気付いて。それで今宵は冬郷家で内輪のHalloween Partyを開催しようかと」
無礼講でというのは少し下品な気がして伏せておいた。
「素敵だね。嬉しいよ。じゃあHalloweenの仮装をしよう」
「それはそうですが。あ、お着替えならお手伝いしますよ」
「ありがとう、瑠衣、手伝ってくれる?」
「もちろんでございます」
柊一さまといると執事としての誇りを思い出す。
ご主人様のために尽くしたい。
その思いで満ちていく。
ところが……
「えっと……何故このようなことに?」
「瑠衣、動かないで……」
僕は何故か服を脱ぐ羽目になり、しかも全身を白い包帯でグルグル巻きにされていた。
「あ、あの、これは一体?」
「一昨年だったかな? Halloweenの夜に海里さんに、『俺の身体を包帯でぐるぐるに巻いてくれ』と頼まれたのは」
「!!」
海里は、そんなことを柊一さまにさせたのか。
「僕ね、もっと上手に巻けるようになりたいんだ。あの日は緩かったみたいで動くとすぐに解けてしまって、身体に絡まって大変だったから」
それって、そういうことをしたからですよね?
とは突っ込めず、抗う術もなく僕は包帯男にされていく。
「瑠衣、ここはどうする? 使えるようにする? それともしまっておく」
あろうことにか、柊一さまが僕の股間を前に悩んでいる。
「しっ、しまっておいて下さい!」
そう叫ぶしかなかった。
「完成! どう? キツくないかな?」
無邪気に微笑む柊一さまを前に、僕も微笑むしかない。
「えぇ上達されましたね」
「ありがとう。瑠衣、僕にも巻いてくれるかな?」
「え? よろしいんですか」
「うん、僕も瑠衣と同じがいい」
「可愛いことを……ではご一緒に包帯男になりましょう」
僕はアーサーに弱いが、柊一さまにも相当甘い。
柊一さまの華奢な身体を痛めないように、絶妙なさじ加減で巻いて差し上げた。
「流石、瑠衣だね、緩くもなくキツくもないよ」
執事学校で応急処置法を学んだことが、こんな所で発揮できるとは。
お互い目と鼻と口しか見えない奇妙な格好に苦笑した。
そこに意気揚々とした足音が聞こえる。
僕と柊一さまは反射的にカーテンの奥に隠れた。
息を潜めていると、海里とアーサーがズカズカ入って来た。
「あった、あった! ん? 半分どこにいった?」
「なに? 俺はドラキュラの衣装を貸してくれと言ったのに、どうして包帯なんだ?」
「アーサー、いいか、ドラキュラなんて王道過ぎる。今流行の仮装を教えてやろう。これはいいぞ。わざと緩く巻くと、身体を動かす度にするすると解けて……その後ムフフな展開が待っている」
「へぇ、それは面白そうだな」
「だろう? ちょっと巻いてみるか」
「おぅ、海里が練習台になってくれよ」
「いいぞ」
まったく何を考えているのやら。
海里とアーサーがじゃれ合って真っ裸になってしまったので、出るに出られないよ。
海里の裸は僕も見慣れているが、柊一さまはアーサーの裸に戸惑っていた。
やれやれ落ち着くまで隠れていよう。
「ずいぶん、ゆるゆるじゃないか」
「これくらいがいいんだ」
「ここが心許ない、見えてる」
「手で押さえておけ」
「えー英国紳士がゆるゆるの包帯男で、しかも股間を手で押さえる? ううう、情けない。こんな姿、瑠衣が見たら怒るだろうな」
アーサー、もう見ているよ。
うん、怒りたいけど、その前に君が気の毒になってきた。
ここは姿を現して巻き直してあげようとした途端、桂人が入ってきた。
「お紅茶の用意が出来たのに、皆さんどこへと思ったら……今度は何でまた包帯男に?」
「Halloweenだよ。去年恐ろしい色のケーキをこしらえてくれただろう」
「ははっ! また、あのお祭りですか。相変わらずよく分かりませんね。それにしても……海里さん、あなたそれでも医者なんですか。包帯がゆるゆるじゃないですか、全く嘆かわしい」
「え、いや、これは……」
まさかあんな下心があるとは言い出せないようだ。
「貸して下さい。おれがしっかり解けないように巻いてあげますよ。アーサーさんの分もね」
「あーれー」
「ぎゃー」
****
その晩、俺と柊一は包帯男のまま寝室にやってきた。
一糸乱れぬ姿とはこのことを言うのか。
どんなに触れ合っても動いても解けない。
桂人の奴、股間までギチギチに締め付けて……
痛くなってきたぞ。
あぁ、包帯であんなことやこんなことをというHalloweenドリームはガラガラと崩れていく。
「柊一、俺の包帯を解いてくれ。頼む」
「海里さん、ですが、かなりキツくて解けませんよ」
「うぬぬ……あまりにギチギチに巻かれて動きが取れない」
「困りましたね……どうかそのままで、今宵は僕が……その……自分でするのを見ていて下さい」
なんと! なんと……
柊一が自分の包帯をするすると解いていく。
どんなストリップショーよりも色気がある。
柊一が自分で潤滑剤を指に取って……
俺の喉は、大きくゴクリと鳴った。
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「しょうがないね、アーサー」
そう言いながら瑠衣は自分の包帯をはらりと解いていった。
包帯の隙間から見え隠れする淡い胸の突起
細いが引き締まったウエスト
そして下腹部の黒くて淡い茂み
ほっそりとした脚
これはこれで滅多に拝めない光景だ。
大人のHalloweenには、甘いお菓子よりも濃密な時間が配られるようだ!
「瑠衣、俺にお菓子をくれないと悪戯するぞ」
「くすっ、アーサーくんは何が欲しいの?」
「瑠衣の甘い蜜」
「も、もう―― 君って人は……今日だけだよ。こんなことをするのは」
そう言いながら、瑠衣は潤滑剤を指先に取り、そっと自身の蕾を……
これは……英国紳士たるもの、むやみに興奮しては……
だが我慢の限界だ!
喉が大きくゴクリと鳴った。
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翌朝、気がつけばいつの間にか包帯は外れ、真っ裸になって眠っていた。
腕には柊一をすっぽりと抱きしめていた。
どこまでが現実で、どこからが夢だったのか。
だが、足下に散らばる包帯を見て、夢でも現実でも最高だったと微笑んだ。
柊一が見せてくれた初めての自慰行為。
興奮で包帯がぶち切れたんだ。
俺の筋肉もなかなかのものだ。
もちろんそのまま君を抱いたよ。
どこまでも優しくね。
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ランドマークとまるでおとぎ話のHalloweenはいかがでしたか。
結局、まぁどこまでも愛を深めてというお話でした。
もちろんアーサーの包帯も吹っ飛びましたよ。
瑠衣の初めての💕を前に冷静でいられるはずないですよね。
Halloween祭りの中での書き下ろしなので無礼講で!
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