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「それで、あの、久我亮衛の事は……」
僕は強引に話を戻した。こっちだって暇じゃないんだ。あさってはバイトも入ってる。
3人の目が一斉に僕に向けられ、僕はほんのちょっと怯んだ。明智さんに至っては、椎野さんにお菓子をあげた相手を突き止められず、恨めしそうな目で僕を睨んでいる。
「携帯の呼び出し音は鳴るんだ」
大きな紙袋をどさりとデスクに置きながら、椎野さんが答えてくれた。
「もし、何者かに拉致されたとか、そういう切羽詰まった状況なら、携帯は通じなくなる可能性が高い。だがヤツは、電源も切ってねえし、充電さえできる状況にある。つまり俺たちは、さほど心配する必要はない」
ああ、なる──いや、そうじゃない。だったら僕が呼ばれた意味がなおのこと解らない。
思わずふうっと深いため息を漏らしてしまった、その時だった。
僕の背後にあるスチールキャビネットのうちのひとつから、ガン、ガンと大きな音が聞こえてきた。ぎょっとして振り向いた僕は、目を疑った。
スチールキャビネットの扉が、内側から激しく叩かれている。物が落ちたとかそういうのではない。明らかに、何者かが叩いている。
僕は「ひぃっ!」と情けない悲鳴をあげて、隣の椎野さんにしがみついた。
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