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久我亮衛失踪事件
警視庁港那伽署は、建て替えられたばかりという事もあってか、非常にモダンな……というか、アバンギャルドな……というか、まあ、人目を惹く近代アート的な建物だ。僕の住む街から電車で10分ほどだが、もともとがおしゃれな街として人気の土地なので、庁舎そのものが観光地になっている。
そんなアグレッシブな庁舎のなかに、まさかこんな空気の淀んだ、まるで昭和に遡ったような部屋が存在するとは、お釈迦さまでも知らぬホトケのお富さんだ。……いや、僕は平成生まれだ。
その部屋は、庁舎の4階の隅にあった。隣はトイレだ。明るくきれいなトイレ。トイレは別に今回の件に関係ない。
ともかく僕は、その昭和の倉庫みたいな部屋を開けて、思わず立ち竦んだ。
間引かれた蛍光灯が、無機質なスチールデスクを物悲しく照らしている。そのうちのひとつは電球が切れかかっており、不規則に点滅していた。
ここが、久我班の部屋……?
奥には段ボール箱が無造作に積まれており、右手にある応接セットは埃をかぶっているような雰囲気だ。本当にここで警察官が仕事をしているのか? 一応、机にはパソコンなんかもあるが、あれってまさかワープロじゃないだろうな。
訝しげにじろじろと室内を見回していると、照明の当たらないスチールキャビネットの影で、何かがごそりと動いたように見えた。
僕は──
・影に向かって声をかけてみる
⇒https://estar.jp/novels/25650637/viewer?page=7
・気付かなかったことにする
⇒https://estar.jp/novels/25650637/viewer?page=20
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