はじめに

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はじめに

 2019年の9月、私はエブリスタで一つのエッセイを始めた。タイトルは、『絵が下手だけど薔薇を描きたい!~(約)20日間お絵描きチャレンジ~』(https://estar.jp/novels/25530991)。  内容はこのあまり知性を感じられないタイトルそのままで、全くと言って良い程絵心が無い私が、20日間薔薇の絵を練習する、というものだった。  絵が下手だという自覚があるにもかかわらず、なぜ薔薇だなんてややこしいものを描こうとしたのかというと、それは、この練習の目的が、自分が書いている小説の表紙を描くことだったからである。  私は、『解語の花』(https://estar.jp/novels/25509408)という、作品の重要なモチーフとして薔薇を用いた小説を書いている。  当然、表紙にも薔薇を使いたいと考えた私は、表紙には薔薇のデッサンのフリー素材を使用している。私は今の表紙も気に入ってはいるが、いかんせん地味だ。  『解語の花』は、フリーターと大学生の恋愛を描いた小説で、やわらかい印象の小説を目指している。だが、今の表紙はそのイメージとは逆で、冷たく硬質で、よそよそしい印象を与えかねないものになっている。  そこで、もう少し柔らかな印象の表紙にしたいと考えたのだが、このフリー素材、いささか規約が厳しい。  それなら、別のフリー素材を探せばよいわけだが、どうにもイメージに合うものが見つからない。  よしそれなら自分で描いてみよう、というのが、前回のエッセイを書くことになったきっかけだった。  この20日間の練習の詳細な顛末は、ぜひ上記のエッセイを読んでいただきたいが、簡単に結果を述べると、初めの絶望的な状況から比べると、ずいぶんましにはなったが、目標には及ばなかった。  ならば練習を継続して、目標を達成すれば良いようなものだが、前回のエッセイを書き終えたあたりで急に慌ただしくなり、ゆっくり絵を描くような状況にはなかった。  実をいうと、今もそんなに時間にゆとりがあるわけではない。前回のように、毎日1時間程度練習する、なんて芸当はとてもできない。  だが、最近、少しずつなら、絵を描いてみても良いな、と思うようになってきた。  どうせ練習を再開するなら、エッセイも再開しよう。そう考えた私は、いそいそとこのエッセイの準備を始めたのだった。  もちろん、絵の練習なんて一人で勝手にしろ、と言われればそれまでなのだが、やはりそれは寂しい。  前回のエッセイを連載していた時、読者の方々に様々なアドバイスや励ましの言葉をいただいた。元来飽きっぽい性質の私が、なんとか20日間も練習を続けられたのは、ひとえにこれらのありがたいお言葉のおかげである。  そういうわけで、今日からまた絵の練習の記録を始めようと思う。  今回も、目標はやはり『解語の花』の表紙を描くことだが、それに加えて、前回なしえなかった、画力の本質的な向上も目指したいと思う。だから、場合によっては、薔薇以外のものを描いたりもする予定だ。  期間は設けず、また、毎日練習するという縛りもなしにする。  また、前回同様、高価な画材をそろえたり、誰かに師事したりする予定はない。  前回にもましてゆるく、気ままな内容のこのエッセイ、役立つ情報、面白いエピソードなどは期待しないでいただきたい。  それでもよろしければ、読んでいただければ幸いである。  さらに、そんな奇特なあなたに対して、極めて図々しい話ではあるが、迷える私に上達のアドバイス、叱咤激励などをいただけたなら、これ以上はない幸福である。
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