アルバン・ヘルツに花束を

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 エブリスタは今年で10周年、と言うことで「思い出のエブリスタ作品」なるものを募集してますね。過去を振り返ることもエッセイを描くことも実は苦手なんですが、その一方で知って欲しいという矛盾した我が儘な気持ちも存在していて、それなら後者の気持ちを大事にした方が良いと思ってスマホのパネルを叩く次第です。  思い出かぁ……考えてあげるとすればやはり「壊れた傘は歌わないhttps://estar.jp/novels/25487141」です。理由は非常に単純で、妄コンで初めて受賞した作品だからです。……うん、我ながら単純だ。  私はエブリスタ歴2年ですが、滑り出しスタートは酷いもので妄コンは9回連続で落ち続け、フォロー数もビューも本棚数も増えない……という状態が続いて本気で自分には才能が無い……とか、他の小説サイトに移った方が良いんじゃないかとか、本気で考えていました。妄コン「傘」が出たのはそんな時でした。  話は変わりますが、私はミステリーが好きです。特にアガサ・クリスティーやコナン・ドイル、ディクスン・カー、モーリス・ルブラン、エラリー・クイーンらが活躍した19〜20世紀の海外ミステリーに傾倒して5人の翻訳作品はアンソロジーも含めて全部読破しました。物凄い時間がかかりましたが、それが苦にならないくらい、いやそれどころか終わることを本気で惜しんだほど。それぐらい好きでした。今も好きです。  だから私は推理作家になりたかったんです。しかしいざとなったら難しいトリック等は何も考えられず、それならトリックでは無く、他の部分で勝負をしようと賭けに出ました。先ずは舞台。  私は欧米に憧れが強く、欧米を舞台にした作品を描きたいと常々思っていました。特に先述した19〜20世紀初頭の欧米を。最初に考えたのは19世紀の英国でした。しかし英国ミステリーはありがちだよなぁ……と考えて大学の時に行ったオーストリア、ウィーンを思い出しました。19世紀オーストリアはハプスブルク帝国時代。それも有名なフランツ・ヨーゼフ治世で黄昏の気配あれど文化は華やかな時代。貴族はいる、社交場もある、文化もある、よし、舞台は19世紀のウィーンだ! 時代は世紀末ウィーンよりも少し前の1880年代の冬。……なんで1880年代にしたのか自分でも謎ですが、多分「緋色の研究」を思い出したんだと思います。でも80年代無しに世紀末ウィーンも20世紀ウィーンもきっと無かった。ウィーンの歴史は全く知らなかったので「ウィーンの歴史」や世界史を照らし合わせて調べました。  主人公の名前は同郷のアルバン・ベルクから取りました。同姓同名にするわけにはいかないからベルクは同じドイツ圏の苗字であるヘルツにし、性格はF・W・クロフツという英国人作家ーーーやはりクリスティーらと同年代のーーーのシリーズ主人公フレンチ警部をモデルにしました。彼は「人当たりの良いジョー」と呼ばれるほど温厚な性格で超人的なひらめきは無いけれど諦めない粘り強さがあります。超人的な探偵が好きで無いことと当時のウィーンは外国人も多いし、貧富の差もきっと大きかっただろうから「どんな身分の人間にも"彼には話しても大丈夫"」と安心感を与えることは大事だろうと考え、性格も確固しました。部下のヒューゲルは人名辞典からの引っこ抜きで最初は名前は決めていませんでしたが今は決まりましたので、そのうち出したいですね。  
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