「マジ万字企画 【 謎 】編 書評④」

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「マジ万字企画 【 謎 】編 書評④」

【⑤】『偶像崇拝』 著:亜衣藍 様  https://estar.jp/novels/25665545  前回に引き続きご参加頂きました、亜衣藍様作品です。  そして同じシリーズからの作品。    探偵物!  前回と今回で構成の方法が異なっています。ミステリィの大雑把な分け方は「推理寄せ」か「人間ドラマ寄せ」。  前回は「人間ドラマ寄せ」でしたが、今回は「推理寄せ」になっています。正直、キャラクター編の時にこちらが良かったです(笑)。で、今回「謎」で前作やりたかったです。  というのも、キャラクター立ての大前提は「スポット」を当てる事ですので、今回のように探偵と助手がメインで活躍してくれると分かりやすいです。逆に「謎」の使い方としては今作オーソドックスなので、前回の方が捻った事を書けました。  という事で、前回分と混ぜて書かせて頂きます。  本作は、おそらく「推理物」「探偵物」と聞いて真っ先に想像するテンプレートパターンです。  「起」に置いて事件発生と背景描写、「承」で第一の謎を解決(プロットⅠ)「次の謎発生」、「転」にて第二の謎を展開し、また「謎」(プロットⅡ)、「結」解決編。  本作で特に良かったのが「起」の事件提示。  非常にスマートな情報量で、キーポイントをしっかり伝え、しかもそれ以降の謎の伏線もここに仕込まれています。物語の進行を一切妨げず、導入としては秀逸でした。急遽プロットポイントで取って付けた謎が発生するのではなく、導入で全て提示し、これを一つずつ紐解いていく(「最初に出すパターン」)。  やはりこれが王道で、読者も安心してページを進める事ができます。  王道の一番の魅力は、いちいち読者に構造を理解させなくても良いところ。故に、キャラクターを存分に動かす事が可能になります。  今回の「見せたいポイント」に「助手が芸能界(アイドル)に潜入して、その裏側を書く」がありますが、構造をイジっていると「構造をイジる」という情報が邪魔で、この辺りに目が行かなくなります。  こうした王道パターンを使う方法論が、キャラ立てにとっては有効に作用します。  本作はアイドル話が非常に面白くて、ページがさくさく捲れました。  探偵の博識も、事件を解決する過程の「行動」で現れているので、とても魅力的に見えます。んん……やっぱり、キャラクター物としては今作が良かったです(笑)。  只、こうなってくると別問題が再度発生します。  前作と真逆で「犯人側が立たない」問題です。  キャラクターのパワーバランス的に探偵側が強くなりすぎていて、事件があっさり解決されてしまう印象がありました。  まぁ、スポットライトは一つしかない分けで、どちらかにしか照明は当たらないのですが、このバランス調整はミステリィの永遠の課題で、展開も大きく変わってしまいます。  良い比較例が、前作。  前作では「被害者側」のキャラクターが立っていたので、「謎」を解決したところで「真の解決にはならない」という物語上の要求が突き付けられ、これをどう収めるのか? というスリル感が終盤の魅力を引き上げていました。  王道からずらし、文学的な問いも含まれる展開で、「謎」の扱い方としては一癖あり秀逸でした。  「キャラクターのパワーバランス」と「構造」によって、まったく見え方が違ってくる良い比較例だと思います。  後、今作で良かった点が「事件規模」です。  事件規模は「ページ数」との相談になります。  やはり推理、探偵物の一番の難点が「登場人物の多さ」であり、私はアガサの小説を二十冊くらい読んでいるはずですが、「ポアロ」以外の名前を誰一人覚えていません! (さすがに探偵側は覚えていますが、容疑者側は皆無)  絵の無い小説で「名前を覚える」のは非常に、非常に困難で、作者は分かっているのですが読者は全く覚えていなので、色々な名前の人が次々喋っても全然分かりません。  となると、毎度同じ事を書きますが「行動させて」印象を付けないといけなくなり、文量が増え、テンポも停滞するので別の仕掛けも必要になり、どんどんページ数が増えて行きます。  そうなると、人物を削る。即ち、事件規模を縮小させる必要性が出てきます。(もしくは犯人側を強くして頭脳犯にするなど)  本作は約八万字の文量ですが、容疑者候補(探偵側以外の人間)は四人です。  これが適量でした。  たった四人でも、八万字使います。これ以上文量を減らしたら、探偵役側の行動にまで制限がかかるので、キャラ立てが失敗する可能性があります。  事件とキャラクターと文量を揃えるのは、かなり難しいです。  あとがきにて「ちゃんとプロット書きました!」とありましたが、ちゃんと書かないとこの辺りのバランスを俯瞰できないので、ミステリィには特にプロットが重要だなぁ、と再認識させられます。  凄く良いバランスだったと思いますので、「ちゃんとプロット!」の精神が大切ですね!  っと、指摘も入れておきます。  探偵役の科学や法知識といった「基礎知識」で事件が整理されていて、これ自体は良いのですが、少々偏りすぎていました。推理(アブダクション)や論理手法やアリバイ崩し、証言取りなどの別パターンがあると探偵がより立体的になるかと思われます。 ーーーー 次回以降の予定 ---- まだ後2作品ありますが、次回以降の企画予定をお知らせします。 〇第五回 テーマ「 短編特集 」 募集期間 9月26日~10月3日 書評掲載 10月3日~(随時) 〇第六回 テーマ「 秋のBL祭り! 」 募集期間 「10月17日 20:00」~ 〇第七回 テーマ「 恐怖 」 (ホラーでも戦争でもマッドサイエンティストでも彼が寝取られる恐怖でも、なんでもOKです) 募集期間 「10月31日 20:00」~  隔週開催でやっていこうかと思っています。  次回だけ変則で26日から一週間募集期間を設けさせて下さい。 (上限15作品。お一人様一作品で。余裕あったら別途募集します)  文字数制限は無しですが、まぁ短編だろ? って雰囲気でお願いします。  あらすじは無しで大丈夫です。 ※ 後、BL勢の皆様は、その次に「BL祭り」しますので、それっぽくないやつ(なければ構いませんが……)で、お願いします。  色々と読ませて頂けますと、私の活力と勉強にもなりますので、ご参加頂けますと幸いです。 P.S  なぜか急に、私が作品にスター連打し始めたら「出して出して」アピールなので、ご検討下さい。
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