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「マジ万字企画 【純文学】編 書評②」
――― 閑話休題 ―――
今後も「指摘」にて書く事になるはずなので、文章の有名セオリーだけ若干触れます。
「言った」「思った」「そして」
これは一作品に三回まで! との文学界ルールがあるそうです。(昔、ある大学の助教授がデータを取っていました 笑)
他にも、脚本出身者が使いやすい(私も頻発します)「……と、」なども連発は駄目みたいです。因みにこれは脚本では「ト書き」と、言って小説における地の文……。(これです)
体言止めの頻出も駄文とされます。
「あいつ表現力ねーなぁ」ってなるらしいですよ。実際、文章の上手い作家さんはほぼ使いませんし、無理矢理の表現でもこれらを回避していた方が、好感が持てるそうです。
表現方法を捻りださないといけないので、コストがあがりvalueも上がりますしね。
具体的には?
では、「良い文章」の例を上げさせて頂きます。
(休憩終わり)
【②】 『暗黒街の天使』 著:紅屋 楓 様
https://estar.jp/novels/25498473
前回も参加して頂きました、紅屋楓さんの作品です。
紅屋さん、質が高すぎて読む前から緊張するのですよ、私。「純文学」とか、絶対ぶっこんで来るやん、絶対おもろいやん。読む前から身を捩ってしまうのですよ……、
(読み込み中)
あぁ、なるほど。
今回で二作目なので、かなり正確に書けそうです。
紅屋さんの作風で最も目を惹くのが「色使い」。とにかく多彩で、映える。個人的には禍々しいとさえ感じます。
今作の冒頭も、華美な色合いと鮮やかな「薔薇の花弁」が舞い上がる様、物語の中核を一枚絵で抜き取るのならばここしか無い! そんなワンシーンを、初っ端のシーンで芸術的に書き上げています。
これは名刺ですね。冒頭だけで、この作家さんが今からどのような物語を書くのか、容易に読者へ想起させます。
加えて「禍々しい」と書きましたが、表面的に映える色彩の裏に、がっつり合理性が組み込まれていて、むしろそうした精緻な合理性を「美」により覆い隠しているような峻厳さがあります
この作品のテーマが、まさにそれでした。
圧倒的な美しさを持ち、美しさの中に取り込まれてしまっている主人公。合理性で身動きが取れずに凝り固められ、快楽と言えば殺人、話し相手は老婦人と小さな妹だけ。全ての女性に受け入れられた主人公が、唯一手に入れられなかった「女」との邂逅を機に、人としての憤懣、つまりは心に悩まされていく。
殺人衝動については何か月後に読むとまた違う見方がありそうですね。
全ての人物に役割が設定されていて、全て、主人公の為に配置されています。名前付きのキャラがもう一人出てきますが、こちらも主人公の変化を描写する為に使用されています。
冒頭とクライマックスは「人物の成長」を表現する手法。もっとありますがネタバレが過ぎるので控えます……。
この合理的な作品構造と「美」こそ、まさに主人公の葛藤そのものではないでしょうか?
もっと深読みするのならば、作者自身の想いも代弁されているのかもしれません。
作品構造すらも主人公の為に使っていく。
ガチですね。
全く隙が無いです。
紹介文に書かれていた「劇中劇」という文言も、きっと伏線ですよね。
『まとめ』
書きそびれましたが、主人公の独特な悩みや価値観に、メタファー要素が多分に含まれています。あくまで隠喩なので、読者の価値観で見え方が変わる仕組みもお見事です。
直球というより、高速フォークボール派の文学でした。
絵画で例えると、印象派というより表現主義……いや、蜷川実花さんの色彩感覚に近い気がします。(勝手に言ってます 笑)
後、濡れ場が上手すぎます。18禁回避なのに、18禁でした。
前回作含め、密度と練度が高すぎて裸足で逃げ出したくなります。
(③へ)
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