さよなら『サニー』

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事件が終わった後日譚。 僕はといえば相変わらずだ。 あの日僕は救急車を呼んで、キーロさんを乗せた。 結局、麻痺の原因はわからなかったけど、病院で3時間ほどたったら動けるようになった。立ちくらみでは? ということになった。 そしてキーロさんは望み通り、日常に戻っていった。 翌日、生還した僕は藤友君にめちゃくちゃ怒られた。迂闊すぎるって。ちゃんとリスクを考えろって。返す言葉もない。こんなに怒られたのって、いつ以来だろう。 ナナオさんは、よかったと泣きながら、また僕をギュッと抱きしめた。ナナオさんからはいつも太陽のにおいがする。 前日午後の授業をさぼった顛末について。僕はいつもの封印の影響か、先生に不在すら気づかれてなかった。藤友君はちゃっかり病欠届けを出していたようだ。 その結果、無断欠席扱いになってたナナオさんだけ先生に怒られて、ずるいと言われた。罰としてあの録音データを取られた。やばい、まじ消して。僕の結婚式に流すとかいわないで。 『腕だけ連続殺人事件』は6本目の腕が見つかって以降、新しい腕が見つかることはなかった。被害者は4本目の腕以外はだれのものかもわからないままだ。神津市でも、年間行方不明者数は多い。くまにゃんさんも、よっちさんも、でりあさんも、よしみちさんも、神津ペッカーさんも、そしてサニーさんとその妹も、そういうふうに扱われるのだろう。 そのうちテレビのニュースも落ち着き、忘れられ、『未解決事件スレッド』でだけ名前を見るようになる。 新谷坂高校の屋上で寝転ぶと、太陽を吸収したアスファルトが背中をじりじり温めた。 新谷坂山からは真っ白い入道雲が立ち上っていた。 もうすぐ、本格的な梅雨が来る。 次話【第4章 明日の日記と僕の日常 6月4日 ペットを飼いたい】 https://estar.jp/novels/25711119 更新時間:10/22より、毎日18:10予定。 3章お読みいただきまして、誠にありがとうございます。 【4章あらすじ】 梅雨の始まり。雨の中の僕らの生活はなんだか憂鬱。体育祭が迫るころ、同級生の坂崎さんが突然ペットを飼いたいといいだした。 ーそんな東矢一人の不思議な日常のお話。 4章は、東矢一人のゆるふわな日常譚です。いろいろご指摘も頂き、4章は現代ファンタジーカテに変更してみることにしました。 今後は章ごとの傾向によって章を移動するかもしれません。 途中で予定ジャンルを変更したのもあり、少し不燃焼感もありますが、4章はわりと迷いのないすっきりさわやか(?)展開です。 お読みいただけると嬉しいです。
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