第66回 鎧兜を着用していない理由がわかった! 諏訪頼重の現人神ぶりに驚きを隠せず…でも、どこまで本当?

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第66回 鎧兜を着用していない理由がわかった! 諏訪頼重の現人神ぶりに驚きを隠せず…でも、どこまで本当?

 包帯ぐるぐる巻きの赤沢新三郎の再登場、時行パパの高時の相変わらずの呆けぶりにも苦笑しましたが、『逃げ上手の若君』第66話の張りつめた緊張感が破られ、思わず吹き出してしまったのは……諏訪盛高でした。  「さらに波状攻撃だ! 間髪容れず近接戦部隊が頼重様を襲う!」  「解説してないで護ったら!?」  時行のツッコミはもっともでしたが、盛高は頼重を守る必要がないのがわかっていたのかもしれませんね。    「諏訪明神は戦神 戦の現人神が武芸で劣れば… この乱世で誰が信仰してくれようか」    正直、諏訪一族の末裔としては、イヤ、ご先祖様がこんなかっこいいはずがない……というむずがゆさがあったのですが、妹も一言〝美化しすぎ〟(父も、私たち姉妹も、かなりの毒舌です)。  私はオバちゃんなもので、「強化魔法(バフ)」の用語がわからなくて調べてしまいました。  MMORPGやRPGで敵・味方を強化する魔法やスキル。  もともとは防御力強化魔法やスキルをバッファー(緩衝材)と呼び、それを略した呼び方が「バフ」だったが、攻撃力強化魔法やスキルにも使われるようになった。  逆に弱体化させるものは「デバフ」と呼ばれる。  現在ではバフやデバフを行う職業やキャラクターが大別してバッファーと呼ばれている(弱体化のみの場合はデバッファー)。〔ピクシブ百科事典〕  ※MMORPG…Massively Multiplayer Online Role-Playing Game(多人数同時参加型オンラインRPG)の略。  ここは、笑うところではないですよ。亜也子にやられた傷の残る新三郎や上体を傾けて口からよだれたらしている高時みたいな〝ネタ〟ではないのです。  もはや700年も前の人間と同じ心理や思考になることはできませんが、当時の物語や思想書を読めば、彼らの価値基準が私たち現代人と同じではないのがわかります。  お金によって手に入れた家電やIT機器で便利に生活する私たちのことを、中世人だったら、私たちが〝神〟から〝力〟を与えられていると見るかもしれません(笑)。  それはさておき、この諏訪明神の信仰を幕府の組織の中に組み入れたのが北条氏だったわけです。それは、このシリーズの第5回でも触れました。 https://estar.jp/novels/25773681/viewer?page=5 みさやままつり 【御射山祭】    諏訪明神(すはのみやうじん)の祭礼の一。諏訪の神が狩をするという伝承にちなみ、上社・下社で七月の二十七日を中心に、二十六日から五日間行われる御狩の神事。鎌倉時代には諸国の武士が参集して、小笹懸・草鹿・流鏑馬・鷹狩、また競馬・相撲なども盛大に行われた。上社では、古くは薄などで穂屋(ほや)を作り、神主が五日間の神事の間こもって奉仕した。〔角川古語大辞典〕  「諏訪明神を武士の守護神として盛り立てるイベントであり この時ばかりは天下の北条氏もいち参加者に過ぎなかった」  本当に謎だらけです。そもそも、この諏訪氏の立場を、足利氏や小笠原氏をはじめとする他の御家人たちはどう思っていたのか……とても気になります。   鎧兜も身に着けずに蛇行剣を振るって光り輝く頼重は確かに少年漫画のキャラですし〝美化しすぎ〟かもしれませんが、神であり神官であり武士である諏訪頼重とその一族が、北条氏によってほかの御家人たちとは別格扱いされていたなんて、美しいとか強いとかいうのではなくても〝得体が知れない〟のだけは確かだと思います。  そういえば、御射山祭の時に、頼重が手にしている、これまた不思議な形の鈴は「八栄鈴(やさかのすず)」と言うそうです。諏訪を訪れた時に、本宮の宝物殿で見て〝頼重の鈴!〟と声を上げてしまいました(第4話でも頼重が手にしています)。平安時代の作だということですが、諏訪明神が降臨した時の持ち物だったそうです。  見慣れない、それでいてとても心惹かれる神宝の数々もまた、少年漫画ゆえの創作物ではなく、諏訪の現実生活に存在していたのだというのもとても興味深いですね。  リアルファンタジーのような諏訪の一族ですが、それでいて、「大乱」はれっきとした歴史的な事実です。第66話の最後のコマ、編集部が考えているのだと思いますが「父が光れば子は陰に潜む…。諏訪時継&玄蕃参る!!」のコピーがよくできていると思いました。信仰だけでことをなしえないことがわかっている頼重と時継の連携は、頭脳派の神官と武士が持つ思考と行動に基づくものでしょう。それでいて、時継の秘められた能力や玄蕃の新技がそこに織り込まれることになると思うと、……ワクワクが止まりません。
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