第八章 霊媒師こぼれ話_白猫の小雪

6/80
前へ
/370ページ
次へ
◆ それから再び____ シヴァは困り果てていた。 おはぎは変わらずお喋りばかりで手続きが進まない。 ニコニコはしゃいでトウとカアの話ばっかりしているの。 まったく困った仔猫だわ。 でもね、これくらいは想定内よ。 容易に想像出来たからこそ私が来たの。 ダイジョウブ、まかせなさい。 この仔にちゃんと手続きをさせるから。 私には秘策があった。 はしゃぎまくって話を聞かない仔猫なぞ、このアイテム(・・・・・・)でイチコロにゃ。 ゴソゴソゴソ、 前足2本を華麗に使い、私は背中に背負いっぱなしの風呂敷包みをほどいてく(風呂敷と言ったって本当はカアのハンカチ(大)だけど)。 ほどけたら、それをそのまま床に広げてお喋り仔猫にお声がけ。 『おはぎ、コレなぁんだ』 私の声におはぎは反応。 喋るのを一時停止でこちらに向いたその直後。 『へにゃ? なんかいいものでもあるのかにょ? んー?(スンスンスン……)へにゃ……?……へにゃ…………へにゃっ!? この匂い、トウとカアの匂いだにゃ!(スンスンスンスン)あと、あと、ひでみときなこの匂いもする!』 もはやクッションにも座っていない。 シヴァのお膝で甘えて寝転ぶ斑の仔猫は匂いに気がつき飛び起きた。 『な、なんで(ココ)でトウとカアの匂いがするの……!?』 言いながらダッシュでそばに来たおはぎ。 尻尾は上にピーンと伸びてプルプル細かく震えてる。 『これはね、おはぎ。私が虹に来る時にトウとカアが持たせてくれたオヤツなの。だから匂いがついてるいるのよ』★ そう、現世から虹まで逝くのにその途中。 お腹が空いたらいけないと、ラップに包んだカリカリと ”ちゅるー” に ”シーパ” に猫専用の鰹節、たくさんのオヤツを用意してくれたの。 本当にすごくたっぷりで、イチニャンだけじゃあ頑張ったって食べきれない。 これはきっと、虹にいる猫達(こどもたち)と仲良く分けて食べなさいって、そういう意味だと思うのよ。 『そーなの!? だから匂いがついているんだ!(スンスンスンスン……)へにゃ……いい匂いにゃぁ……トウと……カアと……ひでみときなこの匂いもする(スンスンスンスン)……あと……オヤツの匂いもおいしそう』 おはぎはウットリ目を細め、家族の匂いとオヤツ匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。 嬉しそうな顔をしちゃって……だけど……そうよね、嬉しいわよね。 多分だけど、虹に戻ってひっきりなしに家族の話をしてるのは、楽しい時間を過ごしたからこそ寂しい気持ちもあるのだろう。 『おはぎ、このオヤツを持って帰ってみんなで一緒に食べましょう。サン達もきっとすごく喜ぶわ。それには早く手続きを終わらせないとね。どう? 頑張って手続き出来そう?』 おはぎの頭をザリザリ舐めて、その顔を覗き込む。 すると、 『出来るっ! 出来るにゃー!(キリィッ!)』 さっきまでとは打って変わってやる気になった。 それを視ていたシヴァはと言うと、 『小雪ちゃん……最高ですっ!』 パァァァァァッと顔を輝かせ、再入国に必要な書類の束をこれでもかと積み上げた。 あらら、思った以上に大変そうね。 これは私も手伝わないとだわ。 ★大福が現世から虹に出かける直前にトウとカアは猫用おやつを、猫のきなこは自分のお気に入りのオモチャを持っていくように荷物をまとめてくれたシーンがこのあたりです(*´ω`) https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=1904
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

472人が本棚に入れています
本棚に追加