第九章 霊媒師こぼれ話_エイミウの星の砂

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それから____ 藤田家とは一旦離れて瀬山夫妻にご挨拶をさせていただいた。 夫妻は優しく穏やかで、視た目は若くて二十歳(はたち)前後の容姿だけれど御存命なら傘寿超え、知ってはいてもどうにも不思議な感覚だ。 奥様とは初見だけれど、瀬山さんとは前に一度お会いした事がある。 あの時は、初対面にも関わらず窮した私を助けてくれた。 嫌な顔の一つもしないで、笑って全てを引き受けてくれたのだ。 「瀬山さん、ご無沙汰しております。二年前は私の代わりに現場に入っていただきまして、本当にありがとうございました」★ 腰を折って私が言うと、瀬山さんは二年前と同じように笑顔をくれた。 『ああ、そんな事もあったねぇ。ううん、良いんだよ。あの時の事、私の方こそお礼を言わなくちゃ。久しぶりの現場は楽しかった。しかも、平ちゃんとのツーマンセルは実に半世紀ぶりだったからねぇ。年甲斐もなくはしゃいでしまったよ。ね、平ちゃん』 話を振られ、隣に立ってる先代は輝く笑顔で話を引き継ぐ。 『そうでしたねぇ。あれは本当に楽しかった。まさかこの年になって、もう一度ショウちゃんと組めるだなんて思いもしませんでした。ふふふ、ブランクなんかなんのその、私達年寄りもまだまだ捨てたもんじゃありませんよ♪』 先代の弾む声。 瀬山さんもニコニコしながら頷いている……が、このあと続く先代の、言葉で話が横道に逸れていく。 『現場では我ら二霊(ふたり)で悪霊どもを千切っては投げ千切っては投げ、三日三晩の大乱闘……! と、言いたいトコロなんですが……私達、はしゃぎすぎて10分ちょっとで任務を完遂しちゃったの。私としてはもうちょっと暴れたかったんですけどねぇ……はぁぁぁ(チラッ)、まったくもう、誰かさんが張り切りすぎるからぁ……(チラッチラッ)』 先代が横目で視ながらそう言うと、言われた方も黙ってられぬと打ち返す。 『なっ!? それを言うなら平ちゃんもでしょー! 言っておくけど僕の3倍は張り切ってたからねっ!』 『3倍ぃ!? そんなコトありませんよ! 大袈裟! ショウちゃん大袈裟ー!』 あ、え、ど、どうしよう、喧嘩になってしまった(それにしては生ぬるい……?)。 私のせいだ、余計な事を言ったから……こ、こういう場合どうしたら良いのだろう。 ★水渦(みうず)が飛ばした現場に瀬山と先代が代わりに入ったコトを説明してるシーンがこの辺りです(『霊媒師募集』本編に飛びます(*´▽`*))。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=2474
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