つなべ夏さん「おたまじゃくしの憂鬱」

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つなべ夏さん「おたまじゃくしの憂鬱」

 妄想コンテスト「今日から私は」で見事大賞を受賞されたつなべ夏さん(『今日から私は、元彼女』)。そんなつなべさんの連載中の長編が『おたまじゃくしの憂鬱』(前編完結・後編連載中)です。  この作品は、「お仕事」×「ラブコメ」なのですが、タイトルの秘密でもあるこの「お仕事」がとても珍しいのです。私は今回初めて知りました。「胚培養士」、つまり不妊治療のためのお仕事です。いつも卵子や精子とにらめっこしています。つなべさんは実際に元胚培養士をされていたそうで、詳しい仕事内容や職場の雰囲気がとてもリアルで、それだけでも興味深いです。  しかも、つなべさんは読者をどきどきさせる恋愛を描くのがとても上手です。それだけに、この独特の職場環境、閉ざされた空間、女性ばかりの職場、ゆえにあけすけな会話がとぶ─そんな職場での唯一の男性・中野優斗と須藤奈央の恋愛には、ほかにはない苦労があるようで……。この設定が、実に面白いと思いました。  中野優斗と両想いになって職場公認の仲となった奈央ですが、「コイタス」(医療用語で「性行為」)を奈央は拒否してしまいます。奈央が越えなければならない壁は、自分自身の中にあります。つまり、SP(「精子」)の克服。『おたまじゃくし』の意味はこれでおわかりでしょう。  二人の恋愛は、とても初々しいもので、奈央はかわいらしくいじらしい。そんな彼女はどのように壁を越えてみせるのでしょうか? また、前編でほのめかされている中野の過去とは何か、ということも気になるところです。  物語はまだ連載中で、二人がどうやってこの問題を克服していくのかに期待が高まります。 『おたまじゃくしの憂鬱【前編】』 https://estar.jp/novels/25985572 『おたまじゃくしの憂鬱【後編】』 https://estar.jp/novels/26003578 『今日から私は、元彼女』 https://estar.jp/novels/25958106  
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