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最終話『告白』
彼の予想外の発言に思わず心子は顔を上げる。心子より頭一つ背の高い楽矢は照れているのか合わせてくる視線に落ち着きがない。
しかし彼の瞳は終始優しげであり、その優しげな視線は心子の緊張をこれでもかと言うほどに強くさせた。楽矢は言葉を続ける。
「テスト勉強の邪魔はしたくなかったから、後出しなんだけど」
「わたっ……私と会えなくて!? ほほほんとですか!?」
「うん」
「……っ」
楽矢と視線を交えたまま二人は沈黙する。心子がこれ以上ないほどの心臓の高鳴りを発生させたと同時に楽矢が再び口を開いた。
「好きです」
そう言って彼は一歩、心子に近付いた。
「俺だけの女の子になってくれませんか」
楽矢はそう言うと右手をそっと差し出してくる。心子は一向に止まない鼓動の高鳴りが、鳴り止まないまま手を伸ばした。
「わっ私も好きです、楽矢さん……あなただけに、見ていて欲しいです」
伸ばした手を彼の手にそっと触れると優しくも力強い手の平が、心子の手を包み込んでくる。
緊張する最中、暫し見つめ合うと楽矢が「抱き締めてもいい?」と心子を見据えながらそう尋ねてきた。心子は小さく頷いてみせると彼は嬉しそうに柔らかい笑みを向けて言葉を口にする。
「ありがとう」
そしてそのまま楽矢の身体に引き寄せられた。こちらへの気遣いを感じる優しい、抱擁だった。
彼の大きな身体に包まれながら今の状況を頭で鮮明に理解し、心子は幸福感で満たされる。
温かな温もりが心子を包み込む中、楽矢の背中をギュッと掴むと彼は心底安心したように息を吐いてこう言った。
「デートした日に勇気が出なくて伝えるのが遅くなったけど、君にちゃんと言えて良かった」
そう言って心子の身体を抱き締める楽矢の姿に愛おしさが込み上げた心子は彼の背中を強く抱き締め返すと言葉を返した。
「わわ、私、ずっと楽矢さんに片想いしてて……だからゆ、夢みたいです……」
「……だね。俺も夢みたいって思ったんだけど……」
そこまで言うと楽矢は心子を抱き締めていた腕をゆっくりと解く。そのままこちらを真剣に見つめながら優しく頬に触れて、言葉の続きを放った。
「どっちでも嬉しい」
そうしてそっと心子の唇に彼の唇が重ねられた。
end
後書き
閲覧いただきありがとうございます!今回は趣向を変えて短期集中連載にさせていただきました。一万文字以内の短編を意識して執筆をしたので上手く自分で決めた文字内に収まり安心しています。
どもり系女子心子と、穏やかな青年楽矢との甘酸っぱいラブストーリーをお楽しみ頂けたのなら嬉しい限りです!最後にここまでお読みいただき感謝します。
●下記の作品は現在連載中の作品です。もし興味がありましたら是非ご覧いただけますと幸いです。
『王子と姫を当てはめて』
→【https://estar.jp/novels/26159803】
『推しCPの女の子に転生してしまい解釈違いすぎて困ります』
→【https://estar.jp/novels/26089221】
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