④夕映えの柿

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④夕映えの柿

⚫︎アズマ:すっかり恒例となりました、火曜の夜は待井さんと生首対談です。4回目はこちらの作品を語ってもらいます! 夕映えの柿 https://estar.jp/novels/25734020 afb2e501-0ea8-44ee-8979-d742a6e9c638 ⚫︎アズマ:待井さんの生首作品はだいたいトンデモナイですが、こちらは「トンデモ賞」の受賞作品で、納得のトンデモ作品です笑。応募した時に、受賞する予感はありましたか? ⚪︎待井さん:エブリスタ向きではないし、5分シリーズ向きでもない話でしたので、受賞できたことにむしろ驚きました。こういったタイプの小説でも評価していただけるんだな、と。  ですが、これまでのどの作品も「受賞できたらいいな」と思いながら書いているのでとても嬉しかったです。 ⚫︎アズマ:柿に人の顔が現れるというアイデアを思い浮かんだのは何かきっかけがありますか? ⚪︎待井さん:私は大林宣彦監督の映画が好きなのですが、「HOUSE ハウス」という映画で、女の子が持ち上げたスイカが人の首になっている、というシーンがあったんですね。そのいかにも作り物めいた感じが好きで、ずっと心に残っていました。私が小説で書いたのは柿にじっくりと馴染んだリアルな人面ですが、発想のきっかけはその映画になるかと思います。 「夕映えの柿」自体が、大林宣彦監督作品(「HOUSE」以外も)の映像表現を小説で出来ないものか、と考えて書いたものになります。  それが達成できたかどうかは置いといて、書いていて楽しい作品でした。 ⚫︎アズマ:実はこの作品、私は妄想コンテストの結果発表直後に読んでいまして、トンデモ賞の名に恥じないトンデモない小説であるなと思ったのと同時に、物語としての完成度の高さと人間の鮮やかな描き方に驚いていました。他の作品と比べて頭一つ、いや、生首一つ抜き出た作品だと思っています。この作品において、最も力を入れた点を教えてください。 ⚪︎待井さん:そんな風に言っていただけるなんて光栄です! ありがとうございます!  力を入れた点は、柿の描写でしょうか。  熟した匂いやすえた匂い、頭上に伸びた枝や、そこから落ちて車にひかれた柿。私の実家のあたりでは季節になるとよく見かけた馴染んだ光景だったので、それを思い出して書きました。  それと、柿の色にもこだわったというか、橙色を際立たせて書くように気を付けていたかと思います。そうすることによって、柿以外のものや景色の明度と彩度が低くなるようにできたらいいな、と。出来たのかな、どうなのかな💦  すみません、人間の描き方を褒めていただいたのに柿の話になっちゃいました。 ⚫︎アズマ:柿の描写は、非常に鮮やかです。五感を織り交ぜ、色づかいを巧みにして、工夫が多く見られます。実際に経験したことを物語に落とし込み、リアリティが増していると思います。 それでは最後の質問です。待井さんの生首作品はどれも、読者に対して物語の出口が用意されていません。あまりに不気味な結末は、読んだ後も物語から抜け出せなくなり、いつまでも余韻が残ります。待井さんは、それぞれの作品の結末に対して、明確な答えというか、真相というものを考えていますか? ⚪︎待井さん:これは作品によりますね。真相らしい真相が存在しない、というパターンも多いかと。考えておいて書かない、というパターンもあります。  ですが、辿り着いたエンディングが全てであり、それ以上語る必要は無いかと思っています。語りすぎて蛇足感が出るのが苦手かもしれません。  物語の真相を書きたいというより、その物語の「世界」を書きたいんだと思います。
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