光姫 琥太郎

ドラマティックに衝撃的な展開でありながら、終始淡々と紡がれていく物語。 そのある意味無機質で冷たい表現が、「ぼく」と「美津」の押し殺された感情を作品全体に醸し出しているように思いました。 いや、しかし…。 とにかく、徹底されたクールさがただ事じゃないですね。 10ページに及ぶ、主人公の一人称視点で描かれた作品ですが、思い返すに主人公の感情が表現された箇所はわずかに四箇所だけです。 「理性を吹き飛ばされそうになった」 「安らぎが欲しかったのだ」 「一人気まずくなって」 「どきりとしながらも」 それ以外の文章は一貫して主人公から見た『事実の描写』に統一され、一切の感情表現が為されていません。 唯一、人間らしい感情を爆発させたのは美津の母親だけで、メインキャラクターの二人は最初から最後まで超クールです。 しかし、『絵』を題材としながらも決してカラフルにせず鉛色の世界観に仕上げたのは良いセンス。ストーリーを巧く引き立てています。 ただもういっそのこと、上記した四箇所さえもクールに染めてしまえばより作品としての『重み』が増したかもしれませんね。 僭越ながらアドバイス…という訳でもないですが、ひとつだけ。 ひたすら冷たいこの物語の中で、恐らく読者が唯一温かみを感じたであろう小道具が、作中に二回出てきたサモワールです。 これ、せっかく二回出したなら最後の辺りでもう一回欲しかった。 そのサモワールに意味があろうとなかろうと、そうすることで作品全体が引き締まるような気がするんです。 小道具は、使い方次第で読後感を左右することができます。今後はそういった辺りのギミックも意識しながら書いてみてはいかがでしょう。 最後になりましたが、お約束の抜き判定、いきますよ。 『抜けない』 いや、この作品で『抜いてはいけない』…かな。
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光姫さま、はじめまして。 抜いたらアカン判定を頂戴しました、桜見改め…今は名乗りはよします(笑) 夜分よりレビューにお時間を割かせてしまい、申し訳ございません。 貴重なアドバイスの数々、今後の創作に生かさせていただきます。 ありがとうございました。
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