にゃんデッド

相も変わらずキャラクターの魅力が光る、王道ドタバタ和風ファンタジーコメディー。とりあえず葵ちゃんの可愛さが終始一貫して常軌を逸しているw 以下はおよそ500ページ以降の感想。それ以前は過去のレビューから隣の猫をお探し下さい。 デコボコすぎるキャラクターを綺麗に噛み合わせてしまうのが凄い。主人公の一行や物語の中心人物は勿論、旅先で出会うちょっとした人物にまで軽くスパイスが効いていて、初めは違和感バリバリの人間関係も、次の瞬間すっかり馴染んでいるのが不思議。 そして、ただ面白いだけではない。まずファンタジーであるにも関わらず、よくもここまで『薬物』というものをくり貫いたなと瞠目しました。薬物が引き起こす悲劇だけでなく、その意外な一面から、ちょっと普通の作品では描かれないような想像を絶する絶望までが、それと関わる人間の深い心理描写と共に描かれています。それでいて読者を置いてけぼりにしないのは、登場人物の誰もがあくまで等身大で、読者と同じ心の持ち主として描かれているから。そして、いつも必ずその隣には『彼等』がいるのですね。 非常に平易な文章で書かれているにも関わらずさして物足りない感じがしないのは、メリハリの良い描写がしっかりと描き込まれているのと、高い総合演出力ゆえでしょう。魅力的なキャラクターとテンポの良い展開も相まって、ファンタジー好きは勿論、あまり小説を読まない人でも漫画を読むかのように楽しめてしまう。食べ物に例えるなら、老若男女嫌いな人などほとんど居ないであろうカレーライス。 展開という観点から難があるとすれば、たまには極上のカツカレーが食べたいのに、またカレーライスが出されてしまう点。長編ファンタジーの王道展開としては一話一話で小さな物語を完結させつつ、大きな物語を進めて行くのが一般的であり、この小説はまさにそれがピッタリ嵌まるものだと思うのですが、大きな物語の進行があまりに遅いと思うのです。およそ800字×850頁とすると、単純計算で単行本6から8巻分ものボリュームがあります。ここまで読み進めた読者の期待として、もういい加減主人公の素性は明かされていて欲しい。そして、『次の大きな物語』に入って欲しい。もっと早くから主人公の素性に関するヒントを貰って、こうかああかと勘ぐり焦らされながら、何だとっ!? と最後に感動する大きな刺激が少し、足りないかなと思うのです。 続く(長ぇw)
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② あー。コメントまで来た。もうすっかり油断して気を抜きますよー(ぼーん) えーと、続き。それと同期して、勧善懲悪の大バトルがそろそろ欲しいところ。この作品を読もうとする読者は、やっぱりどうしてもバトルに期待してしまうと思うのです。四人それぞれが個性的な強さを持っていて、背後で暗躍する大きな悪の組織が存在しているのですから、それぞれがどんな相手とどんな戦いをするのか、少なくとも私は、やっぱり想像して期待せざるを得ないです。噛ませ犬相手に楽勝する展開は確かに痛快ですが、たまにはラスボス相手に本気で戦って本物のピンチに陥って欲しい。 次に、描写について。 凄くメリハリがついていて良いと思いま
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③ 『しばらくして食事を終えた四人。支度を整え外に出ると、ちぎれそうなほど尻尾を振った小柴吉丸が出迎えた。昨日と違い、実に良い天気だ。雲ひとつ無い青空が広がり、気温も心地良い。拓郎は歩きながらぐっと伸びをして立ち止まった。玄関で立ち止まる貞臣の方を振り返る。翼も同じように貞臣に向き合い、三人は自然と握手を交わした』 ここは流れとして、直前まで貞臣の視点が強く投影されて描かれて来たところです。ぽっと視点が四人全員に戻っていますがこれを、 『久方ぶりに賑やかな食事を終えた貞臣は、支度を整えた拓郎たちに続いて玄関の敷居を跨いだ。ちぎれそうなほど尻尾を振って出迎えてくれた小柴吉丸に思わず頬が緩む。
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