中畑竜馬

コバルト文庫賞の決勝進出作品という事に大いに納得できる、幕末動乱の中に咲いた儚くも濃い人間愛に包まれる感動作だと思います。 義理人情に厚く涙もろいオッサンですけん、オイオイ号泣し読了したばってん、何かしら爽やかな気分にも浸っとりますです。 また、「君影草に願う」は、よかタイトルやんと感じ入りました。 すずらん(君影草)に願うのは何か? 読めば解ります。 さて、本格歴史を得意とするクリエ様が、愛する新撰組に対する京の町民観を散りばめて、儚くも病に倒れた沖田と石井秩の悲愛を見事に描ききっとるとよ。 178頁ながら1頁当たりの文量もあり、読み応えのある中編小説やと思います。 歴史カテでありながら恋愛カテが正解と思うくらい、中・高校生ら若い読者にも愛と生の尊さを解りやすく描き、老若男女問わずお勧めできる作品です。 純朴な愛情物語をメインに描きながら、浜崎家の家族愛・土方らの同士愛(師弟愛)など様々な愛の形が盛り込まれ、気持ちんよかスパイスになっとります。 何よりも純愛が実を結ぶ過程や愛あるが故の葛藤に惹き込まれてしまい、涙をタオルで何度も拭き、挙げ句には鼻水まで出てもうて、涙の措置が大変やった。 小生は新鮮組について映画・ドラマ程度の知識しかなくて疎いとばってん、沖田や土方の裏舞台での人となりに惹き付けられ、何よりもアバタ顔の庶民派女性の石井秩が持つ慎ましさ・奥深い愛情・人への優しさに惚れました。 本小説を原作として、「ドラマ化して欲しか!」と、願いたくなるような内容深い作品だと思います。 最後に文中で心に残った(泣きじゃくった)一文を書かせていただきます。 秩の囁きが聞こえる。それは慈悲深い観音菩薩のようであった。
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