9×9=81

美味しい気分に満たされながら、完読いたしました。 少し趣味傾向が寄った喫茶店の物語ですが、作中にもあるように、お店がお客に対する「愛」がものすごく伝わってくる作品でした。その熱意は、さながら西洋哲学と重なっていたようにも思えます。 いくら善行を積み重ねても、その行為自体に「愛」がなければ善い行いをしたということはできない。それは、この物語でもあるように、お客様を第一に考えたうえで最高の愛を持ってもてなすという意思が、仕事場面でもありありと現れていました。(ただし、あちらの哲学は宗教が絡む上に、敵を許して好きになれという、神様一番の最終結論があるのですが。) この作品にはすごいところは、成功という結果を、運や天に願うことなく人間の持つ本質で得たという、素晴らし人間力で物語が構成されていることに、ちょっとした興奮を覚えました。 主人公たちが性別に反した見た目を持っていること。それは一種の天命なのですが、彼らはそれをあえて有利な武器として活用する道を選び、店舗が本来持つべき理念を主張し、打ち勝った結末。開き直りとは違う凛々しさを、成長した登場人物から感じ取ることができました。 お店がお客に愛を持て成すこと。それはどんなお店でできそうなことなのですが、単なる思考の店舗ではその説得力が薄い。 対して、この物語では、作中に「トリアノン・ヌーヴォーとは不思議の国の様な世界である」という言葉から、服装を飾った主人公たちの姿やあべこべにした風景など、ヴィジュアルの方面から愛を提供しているという視覚的な説得力を感じ、画面の前で大きくうなづきました。 お店の理念を問う勧善懲悪の物語。 砂糖も牛乳もいらない、爽やかながら風味が濃いダージリンのストレートティーの様なすっきり感と、もう一杯もいただきたくなる期待感。 おかわりという続編と、次に訪れた時は添え物にチョコケーキも一緒に頼もうと思うほど美味しいお話でした。 ご馳走様でした!
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 本当にありがとうございます。  最初は男の娘と女の執事という設定だけだったのですが、なぜかプロットを作っているうちにこのような小説になってしまいました。  キャラの履歴書とかは全員作ったのですが、最初はテーマ性についてはそれほど考えていなかったです。  それがこのような話になったのは、結局は妹子や美馬たちが物語を作ってくれたのだと思います。  キャラクターの人生を追っているうちにテーマ性が自然と浮き彫りになっていったというのが正しいような気がします。  しかし、これだけ気合いの入ったレビューを書いてくださるというのは作者冥利に尽きます。  本当にありがとうございました!!

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