岡田朔

ティックタックティックタック…… ティックタックティックタック…… 耳に伝わるまるで脈動のようなその音にゆっくりと瞼を開いた瞬間、 眼下に広がる石造りの美しい街に息を呑んだ。 初めて目にしたはずなのに、懐かしささえ感じるのは何故だろう。 何かを私は探すように街を見渡す。 何だっけ……一体何を探しているんだろう。 あ……。 羽音を上げて上空に上がり、目にするのはカテドラルに向かって走りゆく小さな男の子。 ボウイ……。 ああ、探していたのはあの子だ。 小さな羽はどれだけ羽ばたいても、彼には辿りつけない。 カリンカリンという音が空しく空に響くだけ。 定められたこの軌道を廻る事しか許されない私は、目覚める度に彼を探す。 再び眠りにつくその瞬間まで。 ―――クロックシティの独特な音、目に浮かぶ世界。 そこに身を浸す10枚のページを捲る短い時間。 だけど、そこには凝縮されたショートムービーのような完成された世界があり、静けさの中に私は連れ去られる。 これは新しい多数存在の世界だと思いました。 素晴らしい世界に連れて行ってくれてありがとう。 確かに私はここで「時と少年」に出会いました。 沢山の人がこの世界に旅してくれますように。
7件

この投稿に対するコメントはありません