9×9=81

人は苦痛に迫ると現実から逃避したくなる。フロイトはこれを防衛反応のひとつとして定義した。それでも、おってくる現実に耐えながら今日を過ごしている。だが、もしも現実から一瞬でも本格的に逃げられる道具が出来たらどうだろう。それは、やがて「現実の逃げ場」から「夢の世界」へとなってしまう。それぞれが不思議の国を求めたアリスを目指して。 近未来を舞台にしていますが、並行して社会現象まで未来的に嫌な方向へと進歩してしまった舞台での物語で、なんとなく同じようなことになりそうなリアリティを感じました。 人間は解決を思い浮かべ、想像して問題を解決するのは得意なのですが、使い方を誤ってしまうというのも生き物の性。使うものが使われる、まさに便利化した未来が危惧すべき現象のように感じます。 魂の掃除による輪廻というか、己の望む涅槃に飛び込む解脱に近いですね。ただ、解脱は煩悩を捨てて涅槃入りを果たすものですから、あの機械によるダイブは欲望でけがれていますけど。でも、涅槃を理想の現実として定義し、そこに生まれ変わるという点で輪廻という解釈は良い発想でした。 しかし、何にしても人と機械の立場が逆転してしまうという点には、いささか現代世界でも笑いごとではないのかもしれませんね。現に、スマホ中毒者が続出し、一昔前にはガラケーがそうでした。 本当に強いのは、文明の主体である人間か、文明を築きあげた人智なのか。 その戦いは、永遠に決まらないのかもしれませんね。
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レビューありがとうございます。 フロイトを例にとても素晴らしい考察で、思わず見入ってしまいました。 現代は色々な娯楽、麻薬がありますから。半分実現しているようなものですし、簡単にはいきません。 僕も輪廻という言葉が頭に浮かんだのです。グナさんも同じ言葉を浮かんだようで、ちょっとしたシンパシーを感じました。 文明に使われずにこれからも使っていきたいと思います。 レビューありがとうございました。

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