井出光耶

やはり獲りましたか。 他の方もかなりの力作で、大きな差はないのかもしれません。 とりあえず私が読んだ作品はおおむね入賞していて、 読者としてはうれしいかぎりです。 大賞を獲ったので、手放しで褒めたいところですが、大賞を獲ったからこそ今後の活躍への期待がいっそう高まって行くわけですので、今回は私は敢えて辛口のコメントを交えてエールを送りたいと思います。 深水さんの小説を読んでいて感じるのは、素人が書いている文章だというところです。 左脳でそう感じているのにもかかわらず、一方で右脳ではぐいぐい話に引き込まれて行ってしまっいる。 これを才能と言わずして、何を才能と言うべきや(ついつい褒めたくなるのは一体何なのか)。 ですが、小説には文章の洗練度も必要です。 これからプロを目指す人ならなおさらのこと。 たとえば琥珀亭シリーズでいうなら、「琥珀色の日々」~これは私がシリーズでもっとも好きな作品なのですが~の中の第二章モンキー・ファーザーのラストの文章。 モンキーショルダーの猿たちが瓶の上で笑った気がした。 いい文章だけれど、この前に「その時ふと、」という句をつけくわえるだけで、いっそう臨場感が増すと思うのです。 私は「ふん」と鼻で笑う。 まぁ、そのときは私もこの世にいないだろう。 だが、琥珀亭の誰かが息子にも『モンキーショルダー』を飲ませてくれるさ。 まだそのときではない。 それだけのこと。 まだあいつは燃えつきちゃいないからね。 その時ふと、モンキーショルダーの猿たちが瓶の上で笑った気がした。 あとは、登場人物に話させる時に、誰が話しているのかをすぐに読み手に気がつかせる一工夫がほしい。 え~と、これは誰が話しているんだと読者に考えさせる時間のロスを作らせないようにすれば、話の流れはよりスムーズに進む。 プロを目指していっそう頑張ってください。 とりあえず、大賞おめでとうございました。
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