autumn

『消失点のピエロ』 物語は主人公悠太の「正しいところに戻りたかったのに」という言葉に集約されるように、 自分の力では到底修正が叶わない崖っぷちで、既に死へのカウントダウンが始まってます。 彼にとって正しいところとは、 楽しかった家族との時間 グループから抜けでること 学校へ戻ることだったのではないでしょうか。 病気をハッショーしたというリーナと、 白いコートの少女のような先生という対照的な二人。 そこに「あの人」と「あの男」の目と表情は、 富と貧困ばかりではない、境遇の違いと日本社会の闇や差別意識を突くことに見事成功してます。 残念なことにこの国はどちらの少年も守ることができない。 そして人間の心に潜む障害に警鐘を鳴らしていますね。 最後は断ち切らずに読者に救いを残してくれたことにただ安堵しました。 このお話は実際にあった事件にヒントを得た創作です。 読む者を選びます。 作家は非難される覚悟なくしては書き上げることはできなかったでしょう まずそこに読者は驚かされます。 同時期に書かれたエッセイ『虹の色はいくつ?』のなかの「少年を巡る罪と罰」と「ジャパゆきさんの落としこたち」も是非とも読んで頂きたい完成度の高さです。
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拙作へのレビューどうもありがとうございます。 こんなに高い評価で恐縮です。 ご賢察の通り、悠太にとって「正しいところに戻る」とは、不良グループを抜け出て、母と兄の待つ家庭と学校に戻ることでした。 二人の女性の対比にも着目していただけて嬉しいです。 フィリピーナの「リーナ」は悠太にとっては飽くまで話の上でしか知らない人物ですが、年長の二人の不良少年の中では見知っていた彼女の死が暗い影を引いています。 恐らくはまだ若かったリーナが恐ろしい病を得たのは、貧しさゆえに異国の日本で体を売らざるを得なかったためでした。 故国の貨幣価値からすれば少なからぬ金を稼いで帰国したものの、彼女にはもう何の
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