【コメント】

勇者は汗が嫌いだった

かつて、これほど胸が熱くなる作品があっただろうか。タイトルを見る限り、どこにでもありそうなＳＦだろうと思っていたのを、見事に覆されました。赤き汗に隠された過去の因縁、宇宙言語を操るエアリスとカマールが主人公ポカリを追い掛ける本当の理由、かぐや姫の功罪、チルドレン国とミスター国を狙う成吉思汗(チンギス・ハン)の思惑。これだけ様々な思いと因縁が絡み合う、ＳＦ歴史ファンタジーを短いページ数で書き上げる作者には脱帽です。また、この物語では成吉思汗＝源義経説を見事に補完している所にも驚きました。元々、この成吉思汗＝源義経を言い出したのは、あのシーボルトだ。中国の古書『金史別伝』では義経の子が金(満州辺り)の将軍になったと伝え、清朝編慕『古今図書集成』の序文で清の乾隆帝自ら清朝は義経の子孫だと記している。しかし、まだまだこの説には補えきれていない物が沢山ある。笹竜胆紋の相違、清和源氏の白旗と即位式に立てられた白旗、騎兵隊戦術の違い… その全てを完璧に補完させた作者の歴史考察にも驚きを隠せません。ネタバレになりますが、カマールが成吉思汗軍に討ち取られ、ポカリが単騎突撃するシーンには涙が止まりません。全ての伏線が繋がった時に明かされる『赤き汗』の秘密… この物語は、戦乱の時代を全力で駆け抜けた人々の愛と真実のＳＦ歴史ファンタジーの超大作です。追伸：御旗を倒させまいと命尽きる直前、自らの両足に刀を、胸には御旗を貫通させて仁王立ちするカマールの姿に、人目をはばからず大声だして泣いてしまいました。《★》　

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